JR東日本首都圏地区を走る在来線特急列車に乗車するための特急券には、ネット限定割引があります。「在来線チケットレス特急券(トク割)」が所定料金の35%引きで購入できて、お財布にはとても助かります。
この特急券は従来、乗車券とセットの紙のきっぷで、乗車券部分も割引になっていました。しかし、特急券のチケットレス化で乗車券部分が分離されたことで、現在は乗車券部分の割引はありません。
果たして、この特急券と別に購入する乗車券は、無割引でなければならないのでしょうか。実は、このチケットレス特急券は、「大人の休日俱楽部」割引や各種フリーきっぷといった企画乗車券と併用できるのです。
在来線チケットレス特急券(トク割)については、企画乗車券を含め、各種乗車券と併用できます。ただし、駅では買えないので注意しましょう。
この記事では、JR東日本がネット限定で発売する割引料金「在来線チケットレス特急券(トク割)」と各種乗車券類を併用するための条件および方法をご説明します。それらを活用することで、おトクに首都圏地区の特急列車に乗車できるワザをお伝えしたいと思います。
特急料金が実質値引きの「在来線チケットレス特急券(トク割)」
JR東日本首都圏地区の在来線特急列車を利用する際、事前購入型のネット限定割引料金が、ネット予約サービス「えきねっと」で提供されています。
このきっぷは「在来線チケットレス特急券(トク割)」と呼ばれています。特急料金の割引率は、冒頭で申し上げた通り所定の35%引きです。
この割引きっぷは、売り切れにならない限り列車の発車時刻まで購入できます。したがって、ネットで購入すれば実質的に特急料金が値引きされる形です。
この割引きっぷの対象となる列車は、次の通りです。
- 東海道線特急「踊り子」号
- 中央線特急「あずさ・かいじ」号
- 高崎線特急「草津・四万」号
- 常磐線特急「ひたち・ときわ」号
- 臨時特急「鎌倉」号
特急料金の割引は紙のきっぷからチケットレス特急券へ
この割引きっぷ、従来は特急券と乗車券がセットで提供されていました。つまり、乗車券部分も割引になっていました。
筆者が実際に利用した際のきっぷは、以下の通りです(現在は発売終了)。紙のきっぷ上には特急券部分の値段と乗車券部分の値段が記載されていて、双方が割引になっていることが一目で分かります。
2022年から2023年にかけて割引きっぷの商品設計が変更され、チケットレス特急券として特急券部分のみの割引になりました。乗車券部分の割引がなくなったため、基本的には割引なしで乗車しなければならなくなりました。
チケットレス特急券のイメージは、以下の通りです。
それでは、いかなる場合も乗車券は定価で購入しなければならないのでしょうか?
割引の併用ができない大原則の修正
鉄道のきっぷについては、原則的には割引を重複して適用されないことになっています。JR各社のルールブックの「旅客営業規則」第76条に、そのことが実際に明記されています。それは運賃のみならず、料金にも言えます。この規定は、直接的には同一のきっぷに複数の割引を重複適用できないものですが、きっぷの併用についても同じ考え方であろうと思われます。
具体的には、割引されたきっぷと他の割引がされたきっぷを併用できないケースがあります。例えば、「青春18きっぷ」と新快速「Aシート」の「チケットレス指定席券」の併用ができないといった具合です。
しかし、「在来線チケットレス特急券(トク割)」に関していえば、この大原則が修正されています。ユーザーにとっては嬉しいことに、割引された乗車券や各種フリーきっぷとこの特急券の併用が認められています。原則に忠実な割引きっぷが多い中、至って柔軟な対応といえます。
例えば、JR東日本・北海道管内で展開されている「大人の休日俱楽部」の割引が適用された乗車券と「在来線チケットレス特急券(トク割)」の併用が可能です。この取り扱いによって、きっぷのチケットレス化によってなくなった乗車券部分の割引がカバーされている形です。
もちろん、学割や障害者割引が適用された乗車券とこの特急券を併用することも可能です。
筆者の体験:「大人の休日俱楽部」割引乗車券との併用
「在来線チケットレス特急券(トク割)」と併用できる割引乗車券の最も分かりやすい例が、大人の休日俱楽部会員限定の割引きっぷです。
大人の休日俱楽部割引でも特急料金の割引を受けられますが、割引率が「在来線チケットレス特急券(トク割)」の35%よりも低いです。したがって、このチケットレス特急券を併用するのが、最も安くなります。
筆者も、常磐線特急「ひたち」号に乗車する際、大人の休日俱楽部割引が適用された普通乗車券と「在来線チケットレス特急券(トク割)」を併用しました。
このきっぷは、大人の休日俱楽部割引の普通乗車券です。
そして、これが「在来線チケットレス特急券(トク割)」のイメージです。
大宮駅から上野駅を経て勝田駅までの所定の運賃・料金が片道3,890円なのに対し、これらのきっぷを併用すると片道3,210円と、680円の節約につながりました。
このパターンのきっぷを購入する場合、特急券はネットで購入する一方で、乗車券は駅窓口か指定席券売機で購入する必要があります。チケットレス乗車が完全には可能ではない点に留意したいです。
ここでお話ししたのは、通常の大人の休日俱楽部会員割引きっぷです。「大人の休日俱楽部パス」との併用については、駅で確認をお願いします。
フリーきっぷ「サンキュー・ちばフリーパス」との併用例【期間限定】
東京と千葉県房総半島を結ぶ房総特急にも、2024年に「在来線チケットレス特急券(トク割)」が期間限定で導入されました。
また、千葉県内の多くの鉄道路線に乗車できるフリーきっぷ「サンキュー・ちばフリーパス」が毎年期間限定で発売されています。
筆者が房総半島をめぐる際、東京駅から大原駅まで特急「わかしお」号に乗車しました。この時に、特急券には割引の「在来線チケットレス特急券(トク割)」を利用し、乗車券には「サンキュー・ちばフリーパス」を利用しました(パスの有効区間までは別途普通乗車券を購入)。
このきっぷは、「サンキュー・ちばフリーパス」です。あらかじめ、フリー乗車区間内の新浦安駅にて仕込んでおきました。
そして、「在来線チケットレス特急券(トク割)」のイメージです。期間限定で、所定料金の40%引きにて提供されていました。
このパターンも、紙のきっぷとチケットレス乗車券の組み合わせです。やはり特急券はネットでオンライン購入し、紙のきっぷは駅で買う形です。
チケットレス特急券の利用条件・方法
いま、筆者の利用実例をご紹介しましたが、基本的には「在来線チケットレス特急券(トク割)」はSuicaなどの交通系ICカード(乗車券部分)と併用します。この場合、乗車券部分には割引はありません。
しかし、当記事でご説明する通り、割引が適用された乗車券と併用しても、基本的には問題ありません。
利用条件
「在来線チケットレス特急券(トク割)」の利用条件は、次の通りです。
- 特急券はネット限定で発売されること
- 席数限定なので売り切れる場合があること
- オンライン決済のためクレジットカードが必要なこと
特急券は駅で購入できないため、注意したいです。
この特急券を乗車変更したりキャンセルする場合、トク割特有の条件が適用されます。ただし、「在来線チケットレス特急券(トク割)」の場合は紙のきっぷを発券しないため、通常のチケットレス特急券と実質的に同条件です。
きっぷの併用条件、および変更・払いもどし条件ともに比較的緩いのが、この特急券の特長です。売り切れない限り発車時刻まで購入できることから、非常に利用しやすいと思います。
利用方法
「在来線チケットレス特急券(トク割)」については列車の発車時刻まで購入可能ですが、提供席数限定です。需要のある列車については、早くから売り切れる傾向があります。もしも売り切れた場合は、所定料金ベースのチケットレス特急券を購入します。
この特急券を購入するには、「えきねっと」ウェブサイト上で「チケットレス35%OFF」の料金を選択します。この時、所定料金ベースの「チケットレス割引」を選択しないように注意しましょう。
えきねっとアプリでもチケットレス特急券を購入できます。アプリでは一番安い料金のみ表示されるため、上記のような買い間違いはないでしょう。
ウェブブラウザで操作する場合もアプリから操作する場合も、決済手段はクレジットカードのみです。
乗車する際には、チケットレス特急券の購入記録をスマートフォンの画面に表示できるよう準備しておきます。通常はこの画面を提示する必要はありませんが、画面を表示できると安心です。
併用する乗車券類の条件
「在来線チケットレス特急券(トク割)」と併用する乗車券は、他社の割引きっぷにあるような制約がなく、定期券や企画乗車券との併用が可能です。
今申し上げた「大人の休日俱楽部」会員向け割引や各種フリーきっぷとの併用が可能なのが、この特急券の大きな特長です。とても柔軟な運用と言え、利用しやすいです。
まとめ
JR東日本首都圏地区の在来線特急列車におトクに乗車できるネット限定割引料金「在来線チケットレス特急券(トク割)」。この特急券の他に乗車券を準備する必要がありますが、どのようなきっぷが併用可能か当記事にてご説明しました。
全てのユーザーが乗車券の割引を受けられるわけではありませんが、割引された乗車券との併用が柔軟に可能な点が、この特急券の大きな特長です。したがって、躊躇なく利用できる特急券といえましょう。
きっぷのルールの大原則には、割引を重複して受けられないことが挙げられます。したがって、割引乗車券と割引特急券との併用が問題となる場合があります。「在来線チケットレス特急券(トク割)」ではその原則が修正されています。柔軟な取り扱いがされているため、ユーザーにとっても利用しやすいといえます。
発車時刻まで購入可能ですが、席数限定なため売り切れることがある点、決済がクレジットカードでのオンライン決済のみである点には注意が必要です。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考資料
● JR東日本ニュースリリース「首都圏のおでかけはチケットレスで!便利でおトクになります!」2024.01.25付
● 旅客鉄道株式会社 旅客営業規則 第76条(旅客運賃・料金の重複適用の禁止)
当記事の改訂履歴
2024年12月26日:初稿 修正
2024年5月13日:初稿 修正
2024年02月25日:初稿
コメント
えきねっとチケットレスは特急券のみのため特急が使えるフリーきっぷも使える最高です。ときわ路パスと併用したときあります。新幹線Eチケットの場合乗車券と特急券がセットのため新幹線が使えるフリーきっぷと併用出来ず紙の特急券も必要です。