東海道・山陽・九州新幹線のネット予約サービス「エクスプレス予約」および「スマートEX」に導入された「1年前予約」のサービス。従来の発売開始時期である乗車1か月前の10時を待たずに、きっぷを事前に予約購入できるようになりました。
「1年前予約」はとても便利なサービスですが、購入できるきっぷが所定料金と一部の早特商品に限定されます。乗車1か月前の10時から発売される早特商品もあり、各商品の発売開始時期を正確に把握するのが難しくなりました。
一体いつであればおトクな早特商品を確実に購入できるのか、とお悩みではないでしょうか。
一方、JR東日本管内の東北・上越・北陸新幹線で展開されている「新幹線eチケット」には、所定料金とネット限定の割引料金「トクだ値」がありますが、いずれも発売開始時期は単純明快です。
乗車日の90日前から発売が始まる「EX早特28ワイド」は時間帯によっては早々に売り切れるため、「1年前予約」の活用が必須です。ただし「1年前予約」の枠だけで満席になることはないので、乗車1か月前の10時にも「のぞみ」をかけられます!
そこで、この記事では、「エクスプレス予約・スマートEX」の早期予約購入の詳細および予約確定のタイミングについて、えきねっとの「新幹線eチケット」と比較しながら、きめ細かく解説します。
複雑な「EXサービス」早期予約購入の仕組み
東海道・山陽・九州新幹線におけるネット予約&チケットレス乗車のサービス「エクスプレス予約」および「スマートEX」は、まとめて「EXサービス」と呼ばれます。これらのサービスの仕組みが、2023年10月以降抜本的に変更されました。
その柱の一つが、従前の事前予約サービスがバージョンアップし「1年前予約」に衣替えした点です。この点を含め、どのような点が変わったのかのあらましについては、以下の記事(↓)をご一読ください。
「1年前予約」が導入されたことで予約購入の仕組みが複雑になった上、早期予約できる格安な早特商品が豊富なことが、ことをより複雑にしています。
最初に押さえておきたいのは、「1年前予約」サービスで乗車1か月前よりも早期にきっぷを購入した場合でも、列車名や席番が確定するのはあくまでも乗車1か月前になってからという点です。
この場合、鉄道会社とユーザーとの運送契約自体は、代金を決済した際に仮予約の形で成立します。しかし、その内容が乗車1か月前になるまで確定しないという宙ぶらりんな状態になる恰好です。
新幹線の競合である飛行機の予約と比較すると、その違いが分かりやすいです。飛行機の予約も概ね1年前から可能ですが、予約購入時に座席番号を含めて予約が確定します(往々にして機材変更はありますが)。予約購入時に購入内容が確定するのが飛行機、乗車1か月まで完全には確定しないのが新幹線の「EXサービス」というわけです。
また、早特商品の中でも、「1年前予約」の枠組みを利用して乗車1か月前よりも早期に予約購入が可能な「EX早特28ワイド」があります。一方、従来通り乗車1か月前の10時より予約購入が可能な「EX早特21ワイド」などの商品があります。
ひとつ忘れてはいけないのは、EXサービスにおける早期購入の仕組みを利用できるのは、エクスプレス予約の会員やスマートEXの利用登録をしたユーザーだけである点です。非会員の場合、早期予約の恩恵を受けられないことに留意したいです。
所定料金の商品や早特商品のラインナップが豊富にもかかわらず、各商品のルールがまちまちで、予約購入できるタイミングが難解なものになってしまいました。
時系列でみる「EXサービス」予約購入のタイミング
それでは、商品によって異なる予約購入のタイミングについて、図を交えて詳しくみていきましょう。
この記事で主に取り上げているEXサービスの他、JR西日本のネット予約サービス「e5489」でも東海道・山陽・九州新幹線のネット予約が可能なので、あわせてご紹介します。
これらのサービスの予約受付時期を時系列にして、図に落とし込んでみました。時期が早い順に、詳細を説明したいと思います。
所定料金での1年前予約【EXサービス】
乗車1年前の午前5時30分~
「1年前予約」と標榜しているサービスの対象は、e特急券を含む所定料金の商品(EX予約・スマートEX)です。早特商品の受付開始時期は、後述するようにもっと間際になります。
所定料金での予約受付は、乗車日のちょうど1年前の日の午前5時30分から開始になります。
乗車日から1か月よりも前である場合、列車名や席番が確定しない旨表示されます。同意すると購入が完了します。
購入時点では仮予約の形になり、列車名および席番は確定しません。それらが確定するのが乗車1か月前の午前8時となることから、「1年前予約」を管理するシステムと、基幹的な予約システムであるマルスが別物であると推察します。
1年前予約を利用して予約購入できるのは、あくまでもEXサービスユーザーに限られることに留意したいです。
EX早特28ワイド【EXサービス】
乗車90日前の午前0時00分~
EX早特28ワイドは、早特商品の中でも一番早期に予約購入できるものです。これも「1年前予約」と同様、予約購入を先にしておいて、乗車1か月前の午前8時00分以降列車名と席番が確定する仕組みです。
購入が完了すると乗車変更が一切できず、払いもどしをするしかありません。
「EX早特28ワイド」が売り切れで取れなかった場合、乗車1か月前の午前10時00分に予約が始まる「EX早特21ワイド」を狙うのが手です。両者にはあまり料金差がなく、「EX早特21ワイド」では乗車変更が可能なので、検討に値します。
e5489事前受付【e5489会員】
乗車1か月7日前の午前5時30分~
EXサービスとJR西日本のネット予約サービス「e5489」とは全く別物ですが、関連する予約サービスとしてここで取り上げます。
JR西日本のネット予約サービス「e5489」においては、乗車1か月と7日前の午前5時30分から、列車の事前予約が可能です。所定料金かつ紙のきっぷとなりますが、東海道・山陽・九州新幹線の事前予約が可能です。
乗車1か月前の午前10時に手配が始まり、予約が取れた場合は列車名や席番を含む詳細が即時に確定します。予約確定が早いので、EXサービス専用料金やチケットレス乗車にこだわりがなければ、e5489を利用するのもアリかなと思います。ただし、場合によっては座席が取れず、予約不成立となる場合があることに留意したいです。
なお、従前EXサービスで提供されていた、乗車1か月7日前に始まる事前予約サービスは「1年前予約」に衣替えし、すでに終了しています。
一般発売開始【対象制限なし】・早特商品【EXサービス】
乗車1か月前の午前10時00分~
EXサービスであるか否かを問わず、全列車の一般発売が始まるタイミングです。つまり、ネット予約サービスのユーザーでなくても指定券を購入できます。
早期から予約受付が始まる「EX早特28ワイド」以外の早特商品は、このタイミングで発売が始まります。
前述した「1年前予約」では、発売される座席数に限りがあるとのことです。したがって、一般発売のタイミングではじめて発売にかけられる座席が一定数残っています。特に、乗車1か月前の段階で増発列車の運行が決定した場合、このタイミングに望みを託せます。
「1年前予約」のサービスが始まったとはいえ、一般発売が始まる1か月前の10時は、依然として重要な意味があります。いわゆる「10時打ち」が十分に奏功すると考えます。
EXサービス 乗車日1か月前の時間の流れ
「1年前予約」モードから通常予約モードに移るのが、乗車日の1か月前です。ここでは、当日の流れを時系列で見ていきましょう。
購入操作が可能なのは、所定料金であれ「EX早特28ワイド」であれ、乗車1か月前の午前7時30分までです。
午前7時30分を過ぎると「1年前予約」が利用できなくなり、午前10時00分の発売開始を待つことになります。
「1年前予約」を利用してきっぷを購入した場合、確定した列車名や席番が午前8時以降に通知されます。通常の発売時刻である午前10時よりも早く詳細が判明しますが、8時ちょうどとは限りません。
列車名および席番が確定すると、乗車変更や払いもどし操作や、交通系ICカードの紐づけが可能です。
乗車1か月前の午前10時00分以降、通常の発売モードに入ります。予約購入時にシートマップを参照でき、列車名および席番が即座に確定します。
早特商品手仕舞:乗車28日前【EXサービス】
EX早特28ワイドの発売が終了(手仕舞)となります。
早特商品手仕舞:乗車21日前・7日前・3日前【EXサービス】
各種早特商品の発売がそれぞれ終了(手仕舞)となります。
「EXサービス」の乗車変更
「1年前予約」サービスが導入されたことによって、一度購入したきっぷの乗車変更も複雑になりました。乗車1か月前のタイミングで列車名および席番が確定しますが、その前後で乗車変更できる範囲が異なります。
ここでは、紙のきっぷを受け取らないことを前提にお話しします。
乗車1か月前以前の乗車変更
まだ、仮予約の段階です。最初に購入したきっぷの乗車日よりも3か月先(最大で15か月先)までの列車への乗車変更が、回数制限なく可能です。乗車変更には、手数料はかかりません(料金の差額は必要)。
【例】初回の購入日が10月12日で当初の乗車日が翌年10月12日の場合(席番確定前)
→翌年10月12日の3か月後である翌翌年1月11日(最終変更期限)までの列車へ変更が可能です(11月10日に変更操作をする場合、翌年11月10日分までの列車への変更操作が可)。
乗車1か月前の午前7時59分まで、仮予約分の乗車変更が可能です(早特商品を除く)。乗車1か月前の午前8時00分を過ぎると乗車変更の操作ができず、予約の確定を待つ形となります。自分のPC・スマホを使って自分で操作する必要があり、駅では取り扱ってもらえません。
乗車1か月前以降の乗車変更
確定した予約の乗車日から3か月先までの列車への乗車変更が、回数制限なく可能です。乗車変更には、手数料はかかりません(料金の差額は必要)。
【例】初回の購入日が10月14日で当初の乗車日が11月13日の場合(席番確定後)
→11月13日の3か月後である翌年2月13日(最終変更期限)まで変更が可能です。ただし、操作時点で変更可能なのは、操作日より1か月先までの列車です(操作日が10月16日だとしたら、11月16日の列車まで変更可)。
予約してある列車の発車時刻の4分前まで乗車変更の操作が可能です。自分のPC・スマホを使って自分で操作する必要があり、駅では取り扱ってもらえません。
本題ではありませんが、比較のためにえきねっと「新幹線eチケット」について触れます!
えきねっと「新幹線eチケット」ではどうか
さて、JR東日本管内の新幹線(東北・上越・北陸新幹線など)ではどうでしょうか。
これらの新幹線のネット予約&チケットレス乗車サービスは、えきねっとの「新幹線eチケット」です。東海道・山陽・九州新幹線のEXサービスよりは、仕組みがずっと単純明快です。
事前受付
えきねっとを利用する場合であっても、きっぷの発売開始時期は、乗車1か月前の午前10時00分です。それに先立ち、乗車1か月7日前の午後14時00分には、前売分の事前受付が始まります。
「新幹線eチケット」には、所定料金とネット限定の早特商品に相当する「トクだ値」があります。きっぷの種類によらず、発売開始時期は上記の通り単純で、EXサービスのような複雑さはありません。
ただし、事前受付はあくまでも便宜的なサービスに過ぎず、予約の成否は1か月前の発売時まで分かりません。事前受付にエントリーしたタイミングによっては予約不成立となり、きっぷが取れない場合があります。
また、えきねっとの場合、事前受付にエントリーした段階では代金の決済はありません。予約が成立した場合にはじめて代金が決済され、運送契約が成立します。
なお、えきねっとでは東海道新幹線や九州新幹線(JR東海・JR九州管内の列車)の事前受付はできません。一般発売以前に座席を確保したい場合、上述したEXサービスを利用することになります。
乗車変更
「新幹線eチケット」でチケットレス乗車する場合(紙のきっぷを受け取らないこと)を念頭に、予約購入後の乗車変更についてみていきます。
はじめから「新幹線eチケット」として購入する限り、乗車変更の回数には特に制限がありません。ただし、最初に予約した列車の乗車日から3か月後(最終変更期限)までの変更に限定されます。また、乗車変更ができるのは、操作日から1か月先の列車までに限られます。
予約していた列車の発車時刻の4分前まで乗車変更ができますが、万が一発車時刻を過ぎてしまった場合はできません。EXサービス同様、自己操作によって乗車変更を行います。
乗車変更には、手数料がかかりません(料金の差額は必要)。「新幹線eチケット」のネット予約&チケットレス乗車と、乗車変更の柔軟性とは、非常に相性が良いです。
まとめ
EXサービスにおいて以前からあった「事前予約サービス」がバージョンアップする形で「1年前予約」のサービスとして衣替えしました。乗車する1年前から代金を決済し、仮予約として運送契約を成立させることで、安心が得られるようになりました。
「1年前予約」では全ての座席を販売するわけではなく、乗車1か月前の午前10時に始まる一般発売の枠もあります。したがって、「1年前予約」の枠で予約が取れなくても決してあきらめることなく、一般発売開始時に「のぞみ」をかけて席を勝ち取っていただきたいです。
EXサービスの「1年前予約」の導入で、各商品の発売開始時期がとても複雑になりました。料金が最も安い「EX早特28ワイド」は90日前から予約購入できますが、早くから売り切れる傾向にあるようです。乗車1か月前の一般発売分に「EX早特21ワイド」の選択肢が残されているので、見逃さないようにしたいです。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考資料
● 予約・乗車ガイド|エクスプレス予約 新幹線の会員制ネット予約(JR東海)2025.01閲覧
● 新幹線eチケットをご利用の場合|JRきっぷ ご利用ガイド:えきねっと(JR東日本)2025.01閲覧
● エクスプレス予約サービスに関する特約 第10条(発売開始日前の予約サービス)
1.旅客運送契約は、一部列車の普通車自由席を除き、乗車日の1年前の日から旅客営業規則に定める発売日(以下「発売開始日」という。)の前日までにおいて契約の締結等(以下「1年前予約」)を行うことができます。ただし、契約の締結時において約定した乗車日の運行計画が未確定の場合があります。また、当社は必要と認めた場合には1年前予約を停止することがあります。なお、発売開始日により、列車ごとの1年前予約申込の件数には限りがあります。
2.当社は、運行計画に応じて、契約条件に則った列車手配等の手続きを行い、契約の締結時において約定した列車等に変更が生じた場合は、変更した結果を通知します。また、会員が1年前予約を行った列車の発売開始日の8時を目途に順次、契約条件に則った列車・座席手配等の手続きを行い、手配の結果を通知します。
3.第2項にかかわらず、当社は会員に対し、手配の結果の通知をカスタマーセンターから行う場合があります。
4.発売開始日当日中に当社から通知がない場合、会員は、カスタマーセンターに電話連絡を行い、その指示に従うものとします。
当記事の改訂履歴
2025年01月08日:当サイト初稿(リニューアル)
2023年10月16日:前サイト初稿
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