東京駅から北へ向けて走るJR東日本・北海道管内の新幹線全線および北陸新幹線で利用できるチケットレス乗車サービス「新幹線eチケット」。
JR東日本のネット予約サービス「えきねっと」上で購入を済ませれば、駅できっぷを受け取ることなく、そのまま乗車可能です。その上、指定席を利用する場合、紙のきっぷより大人200円安くなるように料金設計されています。
いいこと尽くしに思える「新幹線eチケット」ですが、東京都区内や仙台市内でJR在来線に乗り継ぐ場合、ちょっとお待ちを。
従来からの紙のきっぷである普通乗車券では「特定都区市内制度」が適用されるため、東京都区内および仙台市内におけるJR在来線の運賃が含まれているのです。そのため、新幹線eチケットによるIC乗車と、紙のきっぷでの乗車それぞれの総額を意識すると、旅費の節約につながる場合があります。

JR在来線区間の運賃相当分が200円を超える場合「新幹線eチケット」の割引額200円を上回ります。その場合、紙のきっぷ(普通乗車券+新幹線特急券)を購入するとおトクです!
この記事では、JR東日本・北海道新幹線管内の各新幹線、および北陸新幹線内で利用できるチケットレス乗車サービス「新幹線eチケット」と特定都区市内制度の関係について、深掘りしていきます。当記事でご説明する内容が、コツコツ節約する方のお役に立てれば幸いです。
- 新幹線eチケットの値段は、所定運賃・料金の200円引きであること(指定席)
- チケットレス乗車する場合、前後の在来線区間の運賃は含まれないこと
- JREポイントの付与分を考慮すると、チケットレス乗車が劣るとは限らないこと
利用区間によっては「新幹線eチケット」が割高になる

JR東日本・北海道管内の新幹線および北陸新幹線における「新幹線eチケット」には、従来のきっぷの料金設計とは異なる特徴があります。それをご説明した上で、新幹線eチケットが万能ではないことをご説明します。
「新幹線eチケット」の料金設計の特徴
「新幹線eチケット」の料金設計には、以下のような特徴があります。
- 普通乗車券と新幹線特急券に相当する部分が一体となっている
- 新幹線停車駅相互間で運賃・料金計算を打ち切る
- 指定席を利用する新幹線eチケットは大人200円の割引がある
新幹線に乗車する場合に購入しなければならないきっぷは、原則的には普通乗車券と新幹線特急券です。運賃と料金の2階建てというわけです。
一方「新幹線eチケット」に関しては、乗車券と新幹線特急券が一体となっています。そのため、それぞれのきっぷを購入することなく、交通系ICカードやスマートフォンで自動改札を通れるしくみです。
また、「新幹線eチケット」については、新幹線停車駅相互間で料金が設定されています。例えば、東京駅から仙台駅ゆきの新幹線eチケットには、新幹線の区間のみの運賃および料金が含まれています。したがって、新幹線から乗り継ぐJR在来線の運賃は含まれません。
新幹線eチケットで指定席を予約する場合の値段は、紙のきっぷを購入する場合と比べて200円安くなります。そのため、経路中に新幹線乗車区間に接続する在来線区間を含まない場合、新幹線eチケットの総額が必ず低くなります。
ただし、自由席を利用する場合には200円の割引はなく、紙のきっぷと同額です。自由席に関しては、別のチケットレス乗車サービス「タッチでGo!新幹線」も利用できます。詳しくは、以下の記事をご一読ください。
東京都区内と仙台市内の在来線が含まれる場合要注意
ここで着目したいのが、東京駅および上野駅が属する東京都区内、および仙台駅が属する仙台市内に所在するJR在来線の駅です。
従来からのきっぷである普通乗車券には、片道の営業キロが201km以上である場合「特定都区市内制度」というしくみが適用されます。新幹線eチケットに関係するところでは、東京都区内や仙台市内に所在するJR駅がそれぞれ一つの駅とみなされます。そのため、各都区市内のJR在来線の運賃が自ずと含まれることになるのです。

新幹線eチケットを利用するユーザーの圧倒的大多数は、東京駅・上野駅から仙台駅まで新幹線にしか乗車しないと思われます。それらのユーザーにとっては、当記事でご説明する節約術は関係ありません。
しかし、品川駅や新宿駅をはじめとする東京都心部のJR駅、仙台駅周辺の在来線の駅を利用するユーザーにこそ、当記事のワザに注目していただきたいのです。
東海道・山陽・九州新幹線におけるチケットレス乗車サービス「EX予約・スマートEX」よりも、新幹線eチケットの方がずっとシンプルです。そのため、比較的理解しやすいと思います。
東京駅・上野駅からJR在来線に乗り継ぐ場合忘れずに試算を
紙のきっぷの総額が、新幹線eチケットでIC乗車する場合の総額を下回る現象は、東京都区内各駅や仙台市内各駅で乗降する場合に限らず、多くのパターンで発生します。
例えば、横浜駅から東京駅までJR在来線を利用し、東京駅で新幹線に乗り継ぐようなケースです。この場合、「横浜市内」という別の特定都区市内が登場するため、話がより複雑になります。
乗車区間が東京都区内や仙台市内で完結する場合ばかりではなく、JR在来線に乗り継ぐ多くの場合で総額の比較が必要になる点に留意したいです。

それでは、いま申し上げた内容をさらに深掘りしていきます!
特定都区市内制度の基本を押さえる

東京都区部および全国の大都市には、多くのJR駅が集中しています。それらの駅を発着するきっぷを発売する上で、一つの駅とみなすと出札業務がシンプルになります。そこで制定されたのが「特定都区市内制度」と呼ばれる運賃制度です。
この制度においては、各都区市における運賃計算の起点になる駅を「中心駅」とし、その周辺の駅とともに一つのゾーンを構成する形です。東京都区内をはじめ、全国には12か所のゾーンが導入されています。
運賃計算を行う上でこの制度を適用するのは、中心駅から片道の営業キロが201km以上である場合です(東京山手線内については片道101km以上)。
新幹線eチケットが導入されているエリアで関係するのが、東京都区内・東京山手線内および仙台市内の各ゾーンです。例えば、東京都区内に属する西荻窪駅(東京都杉並区)は、東京駅から20.6km離れています。

また、仙台市内に属し、ニッカウヰスキー仙台工場、作並温泉郷への最寄駅である作並駅(仙台市青葉区)は、中心駅である仙台駅から28.7km離れています。

特定都区市内制度の基本については、以下の記事(↓)をぜひご一読ください。
「新幹線eチケット」には新幹線停車駅が表示される

このように、新幹線eチケットには、特定都区市内制度が適用されません。
そのため、発着駅が東京駅および上野駅である場合であっても、きっぷ上に表示される発着駅には「東京都区内」や「東京山手線内」ではなく、それらの駅名が直接記載されます。
同様に、仙台駅に関しては「仙台市内」ではなく、「仙台」と記載されます。

これは、新幹線eチケットを紙のきっぷとして発券してみたものです(通常、紙のきっぷを発券する必要はありません)。
仙台駅から大宮駅(さいたま市大宮区)までは片道201km以上離れているため、本来特定都区市内制度が適用されるはずです。しかし、新幹線eチケットにおいては当該制度が適用されないため、発着駅が単駅で表示されます。このきっぷには「仙台」と表示されています。
参考までに、特定都区市内制度が適用される場合、券面には各都区市名が記載されます。

これは、かつて発売されていた常磐線特急「ひたち」号の仙台駅・品川駅間の企画券(トクだ値)です。このきっぷには特定都区市内制度が適用されたため、駅名が「仙台(市内)」および「品川(都区内)」と表示されています。

それでは、紙のきっぷがいくら安いか検証していきます!
「新幹線eチケット」と紙のきっぷの料金シミュレーション

ここでは、東京都区内および仙台市内に含まれるJR在来線の駅として、中央線荻窪駅(東京都杉並区)および前述した仙山線作並駅(仙台市青葉区)を取り上げます。これらの駅を発着する場合、新幹線eチケットと紙のきっぷではどれくらいの差額が生じるのでしょうか。
いずれのケースについても、「はやぶさ」号の普通車指定席を通常期に利用する場合を想定したいと思います。
設例1:荻窪駅(東京都区内)→ 仙台駅(仙台市内)
荻窪駅から仙台駅に向かうには、中央線を利用し、東京駅で新幹線に乗り継ぐのが便利です。新宿駅で埼京線・湘南新宿ラインに乗り換え、大宮駅で新幹線に乗り継いだ方が総額が低くなりますが、本例では東京駅で乗り継ぐこととします。
新幹線eチケット+在来線IC運賃【普通車指定席:通常期】
乗車区間 | 券種 | 運賃・料金 | 備考 |
荻窪駅・東京駅 | IC乗車運賃 | 318円 | |
東京駅・仙台駅 | 新幹線eチケット | 11,210円 | 乗車券+特急券のセット |
総額 (a) | 11,528円 |

全区間通しの普通乗車券+新幹線特急券【普通車指定席:通常期】
乗車区間 | 券種 | 運賃・料金 | 備考 |
東京都区内・仙台市内 | 普通乗車券 | 6,050円 | 特定都区市内制度適用 |
東京駅・仙台駅 | 新幹線特急券 | 5,360円 | |
総額 (b) | 11,410円 |

このケースでは、紙のきっぷを購入する方が新幹線eチケットを利用するよりも総額で118円安くなります。
設例2:東京駅(東京都区内)→ 作並駅(仙台市内)
東京駅から作並駅に向かうには、仙台駅で仙山線普通列車に乗り継ぎます。
新幹線eチケット+在来線IC運賃【普通車指定席:通常期】
乗車区間 | 券種 | 運賃・料金 | 備考 |
東京駅・仙台駅 | 新幹線eチケット | 11,210円 | 乗車券+特急券のセット |
仙台駅・作並駅 | IC乗車運賃 | 506円 | |
総額 (c) | 11,716円 |

全区間通しの普通乗車券+新幹線特急券【普通車指定席:通常期】
乗車区間 | 券種 | 運賃・料金 | 備考 |
東京都区内・仙台市内 | 普通乗車券 | 6,050円 | 特定都区市内制度適用 |
東京駅・仙台駅 | 新幹線特急券 | 5,360円 | |
総額 (b) | 11,410円 |

作並駅は仙台市内に属しているため、普通乗車券の値段は通しの運賃に含まれる形です。紙のきっぷを購入する方が、新幹線eチケットを利用するよりも総額で306円安くなりました。
設例3:戸塚駅(横浜市内)→ 八戸駅
乗車区間が、東京都区内および仙台市内で完結とならないケースです。横浜市内に属する戸塚駅から東海道線普通列車に乗車し、東京駅で「はやぶさ」号に乗り継ぐケースです。
新幹線eチケット+在来線IC運賃【普通車指定席:通常期】
乗車区間 | 券種 | 運賃・料金 | 備考 |
戸塚駅・東京駅 | IC乗車運賃 | 736円 | |
東京駅・八戸駅 | 新幹線eチケット | 16,390円 | 乗車券+特急券のセット |
総額 (e) | 17,126円 |

全区間通しの普通乗車券+新幹線特急券【普通車指定席:通常期】
乗車区間 | 券種 | 運賃・料金 | 備考 |
横浜市内・八戸駅 | 普通乗車券 | 10,010円 | 特定都区市内制度適用 |
東京駅・八戸駅 | 新幹線特急券 | 6,800円 | |
総額 (f) | 16,810円 |

紙のきっぷを通しで購入する方が、新幹線eチケットを利用するよりも総額で316円安くなります。
料金シミュレーションの総括

以上の2ケースでそれぞれ3通りの試算を行い、合計で6通りの結果が得られました。ここで、その結果を振り返ります。
設例1:荻窪駅(東京都区内)→ 仙台駅(仙台市内)
きっぷの組み合わせ | 総額 |
在来線IC乗車+新幹線eチケット (a) | 11,528円 |
普通乗車券+新幹線特急券 (b) | 11,410円 |
紙のきっぷによる節約額 (a-b) | 118円 |
JR在来線から新幹線に乗り継ぐパターンです。普通乗車券を購入することで特定都区市内制度を活用すると、チケットレス乗車よりも低額になります。
設例2:東京駅(東京都区内)→ 作並駅(仙台市内)
きっぷの組み合わせ | 総額 |
在来線IC乗車+新幹線eチケット (c) | 11,716円 |
普通乗車券+新幹線特急券 (b) | 11,410円 |
紙のきっぷによる節約額 (c-b) | 306円 |
新幹線からJR在来線に乗り継ぐパターンです。この例でも特定都区市内制度の適用を受けることにより、紙のきっぷの組み合わせの方がチケットレス乗車よりも有利になります。
設例3:戸塚駅(横浜市内)→ 八戸駅
きっぷの組み合わせ | 総額 |
在来線IC乗車+新幹線eチケット (e) | 17,126円 |
普通乗車券+新幹線特急券 (f) | 16,810円 |
紙のきっぷによる節約額 (e-f) | 316円 |
JR在来線から新幹線に乗り継ぐパターンです。全区間通しの普通乗車券を購入することで、チケットレス乗車よりも低額になります。
JR在来線区間の運賃相当額が200円を超えるか否かで判定
以上の3例とも、JR在来線区間の運賃相当額が200円を超えたため、紙のきっぷを購入する方が有利であると判定されます。したがって、新幹線の前後に乗車する在来線区間の運賃の合計額が200円を超えるかどうかで、新幹線eチケットを利用するか否かを判断可能です。
なお、新幹線eチケットを利用し、チケットレス乗車すると、JREポイントがより多く付与されます。総額ベースで単純に比較すると紙のきっぷが有利となりますが、JREポイント分を考慮すると、ポイントベースで新幹線eチケットがおトクです。
「えきねっと」上で簡単に比較可能
新幹線eチケットでチケットレス乗車するか紙のきっぷで乗車するかを判断するにあたり、「えきねっと」の予約画面上で簡単にシミュレーションを行えます。
スマートフォンアプリ上ではチケットレス乗車の料金計算にしか対応していないため、紙のきっぷとの比較はブラウザ版で行いましょう。
まとめ

「新幹線eチケット」でチケットレス乗車できる区間であっても、実際に乗車する経路によっては金額面で紙のきっぷに劣ることがあります。
その理由は、東京都区内や仙台市内といったゾーンにおいては在来線の運賃が込みになる「特定都区市内制度」です。
新幹線停車駅相互間で利用する場合はチケットレス乗車を選択して間違いありません。しかし、新幹線の前後にJR在来線に乗り継ぐ場合、紙のきっぷと総額を比較したいです。JR在来線区間の運賃相当額が200円を超える場合、紙のきっぷを購入すると総額ベースで節約につながります。
ただし、JREポイントを貯めている場合、チケットレス乗車で付与されるポイント数が多いです。そのため、紙のきっぷの安さを取るか、ポイントを取るかを選択することになります。
新幹線eチケットを利用できる区間であればチケットレス乗車しなければならないと思い込みがちですが、決してそうではないことを覚えておきたいです。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考資料
● JR東日本 えきねっとウェブサイト「新幹線eチケットをご利用の場合|JRきっぷ ご利用ガイド」2025.02閲覧
当記事の改訂履歴
2025年02月10日:当サイト初稿
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