「エクスプレス予約・スマートEX」と特定都区市内制度~紙のきっぷとチケットレス乗車を使い分けて賢く節約~

東海道新幹線東京駅駅名標 ネット予約

東海道・山陽・九州新幹線のネット予約サービス「エクスプレス予約(EX予約)」と「スマートEX」。

チケットレス乗車できる点では、両者は類似したサービスです。しかし、会員用クレジットカードへの入会が必要なEX予約と、それが不要なスマートEXでは、料金体系が異なります。

料金設計の面で両者に共通しているのは、「特定都区市内制度」が適用されない点です。新幹線区間の料金と在来線区間の運賃が、別々にかかります。

例えば、東京都区内に属する新宿駅(東京都新宿区)から大阪市内に属する京橋駅(大阪市城東区)まで乗車するケースが該当します。

特定都区市内制度が適用された従来の紙のきっぷ(普通乗車券+新幹線特急券)と、制度が適用されないチケットレス乗車(乗車券と新幹線特急券が一体)では、一体どちらの総額が安くなるのでしょうか。

EX予約会員の場合、会員専用料金「e特急券」と普通乗車券(紙のきっぷ)を併用すると総額が安くなる傾向があります。スマートEXの場合、自由席と指定席では傾向が異なります。

この記事では、特定都区市内制度が関係する場合のEX予約およびスマートEX料金の試算の仕方や、適切なきっぷの選び方を解説します。

節約できる金額は微々たるものですが、高額になりがちな新幹線の旅費を少しでも抑えたい方の参考になれば幸いです。

この記事を読むと分かること
  • EX予約・スマートEXには特定都区市内制度が適用されないこと
  • 在来線への乗り継ぎがなければチケットレス乗車が適切なこと
  • 普通車自由席に関してはスマートEX料金と所定運賃・料金が同額であること

紙のきっぷを購入すると総額が低くなる傾向

東海道新幹線の自動改札機

新幹線からJR在来線に乗り継ぐ場合、チケットレス乗車では在来線区間のIC運賃が別にかかります。

一方、紙のきっぷ(普通乗車券)には、在来線区間も当然含まれます。乗り継ぐ在来線の区間が特定都区市内のゾーンに収まる場合、在来線に関しては運賃負担がありません

したがって、在来線に乗り継ぎ、特定都区市内で乗り降りする場合、後者の運賃・料金の総額が低くなる傾向があります。

普通車指定席を通常期に利用する場合、きっぷの買い方による料金の差は、以下の通りです。

● 新宿駅(東京都区内)・京橋駅(大阪市内)間

きっぷの組み合わせ総額(円)
在来線IC乗車+EX予約チケットレス【EX会員】14,628
普通乗車券+e特急券【EX会員】14,230
在来線IC乗車+スマートEXチケットレス14,918
普通乗車券+新幹線特急券(無割引)14,720

● 横浜駅(横浜市内)・嵯峨嵐山駅(京都市内)間

きっぷの組み合わせ総額(円)
在来線IC乗車+EX予約チケットレス【EX会員】13,468
普通乗車券+e特急券【EX会員】13,050
在来線IC乗車+スマートEXチケットレス13,718
普通乗車券+新幹線特急券(無割引)13,500

EX予約、スマートEXとも、在来線区間の運賃が含まれた普通乗車券と新幹線特急券を併用した方が、チケットレス乗車するよりも総額が低くなることが分かります。

スマートEXでチケットレス乗車すればスムーズには違いありませんが、在来線に乗り継ぐ際料金が割高になり得ることを覚えておきたいです。

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特定都区市内制度の基本をおさらい

大阪駅駅名標

全国の主要な大都市(東京23区や政令指定都市)には、JR線の駅が集中しています。各大都市に属するJR駅をまとめて、一つの駅(ゾーン)として扱うのが「特定都区市内制度」です。このゾーンの直径は大体20-40kmで、想像以上に広い範囲をカバーしています。

東海道・山陽・九州新幹線に関係するところでは、以下のゾーンが該当します。

  • 東京都区内・東京山手線内
  • 横浜市内
  • 名古屋市内
  • 京都市内
  • 大阪市内
  • 神戸市内
  • 広島市内
  • 北九州市内
  • 福岡市内

なお、岡山市や熊本市など、新しく政令都市になった都市には、この制度は適用されません。

特定都区市内制度が適用されるのは、中心駅からの営業キロが片道201km以上となる場合です(東京山手線内は片道101km以上)。東海道・山陽・九州新幹線であれば、乗車する経路が201km以上となることが多いので、この制度を押さえておきたいです。

特定都区市内制度が適用されたきっぷには、以下のきっぷのように「●●市内」のような表示があります。

大宮駅から名古屋市内ゆき普通乗車券

特定都区市内制度の基本については、以下の記事(↓)をぜひご一読ください。

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特定都区市内制度が適用されないEX予約・スマートEX

この記事で取り上げるEX予約やスマートEXの料金は、普通乗車券および新幹線特急券をベースとしつつ、独自の商品として設計されています(厳密に言えば、特別企画乗車券に分類されます)。そのため、特定都区市内制度は適用されません。以下のきっぷのように、新幹線の停車駅が単駅表示されます。

東京駅から名古屋駅ゆき新幹線特急券

EX予約やスマートEXの場合、きっぷの有効区間が新幹線停車駅相互間のみで、乗り継ぐJR在来線の列車は含まれません。そのため、チケットレス乗車する際に在来線を利用する時には、別途運賃が必要となります。従来の紙のきっぷを使った場合とで、料金差が生じます。

このため、チケットレス乗車と紙のきっぷ(普通乗車券+新幹線特急券)のどちらが割安になるかを試算し、きっぷの買い方を判断する必要があります。

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EX予約とスマートEXの料金体系の違い

ここで、EX予約とスマートEXの料金体系の違いに触れたいと思います。両者は似ているようで、全く異なる商品です。

EX予約

年会費1,100円の会員サービスとして提供されるEX予約には、会員専用の割引料金が設定されています。余談ながら、予約サイトの混雑時には、優先ログインの対象者として優遇されます。

EX予約会員用の料金は、乗車券部分は従来と同額なものの、新幹線特急券部分の値段がEX予約会員専用の独自設計です。現在はシーズナリティ(シーズンによる価格変動)が導入されており、最繁忙期・繁忙期には料金が上がり、閑散期には下がります

(a) 無割引の普通乗車券部分
(b) EX予約会員専用の新幹線特急料金部分【指定席は時期による変動あり】

[(a)+ (b)] = EX予約(EX-IC)の料金
[(b)+200円] = e特急券の料金 (b’)

EX予約の料金には、[(a)+ (b)]がセットのIC乗車用料金(EX-IC)に加え、(b’)として「e特急券」が紙のきっぷで提供されます(EX-ICより200円加算)。普通乗車券とe特急券の併用が可能です。

スマートEX

クレジットカードと交通系ICカードを持っていれば、年会費無料で利用登録が可能です。

スマートEXの料金は、無割引の紙のきっぷ(普通乗車券+新幹線特急券)の値段に連動しています。紙のきっぷと同様に、シーズナリティが導入されています。

(a) 無割引の普通乗車券
(b) 無割引の新幹線特急料金【指定席は時期による変動あり】

[(a)+ (b) -200円] = スマートEX普通車指定席の料金

紙のきっぷとスマートEXの料金には基本的に差がなく、交通系ICカードによるチケットレス乗車に特化した商品設計です。

無割引の運賃・料金がベースながら、紙のきっぷにはある特定都区市内制度が適用されない点が、ユーザーにとっては不利と言えます。なお、普通車自由席には料金差がないため、特定都区市内制度が適用される紙のきっぷを購入しましょう。

お待たせしました。EX予約会員用料金のお話を始めます!

「EX予約」会員用料金のシミュレーション

東海道新幹線N700系新横浜駅にて

それでは、具体的な設例をあげて、特定都区市内制度が適用される紙のきっぷの値段と制度が適用されないEX-ICチケットレス乗車の値段を比較していきます。

当記事では、利用が多い普通車指定席に絞ってシミュレーションを行います。

設例1:新宿駅(東京都区内)→ 京橋駅(大阪市内)

東京駅から新大阪駅までの区間を東海道新幹線に乗車し、前後のJR在来線列車に乗り継ぐケースを想定します。

【東京都区内】

新宿駅は東京都庁の最寄り駅で、山手線と中央本線が交わったところにある駅です。

東京都区内

【大阪市内】

京橋駅は、大阪環状線とJR東西線が交わるところにある駅です。大阪城公園に近いです。

大阪市内

EX-IC料金+在来線のIC運賃【普通車指定席:通常期】

【EX-IC料金(新幹線特急料金込み)】
東京駅→新大阪駅:14,230円

【在来線IC運賃】
新宿駅→東京駅:208円
新大阪駅→京橋駅:190円

【総額】
14,628円

画像引用元:「乗換案内」アプリ(2025年1月現在)

全区間通しの普通乗車券+e特急券【普通車指定席:通常期】

【全区間の普通乗車券】
東京都区内→大阪市内:8,910円

【e特急券】
東京駅→新大阪駅:5,320円

【総額】
14,230円

EX予約会員専用の「e特急券」を活用した旅費の節約術に関しては、以下の別記事(↓)をぜひご一読ください。

設例2:横浜駅(横浜市内)→ 嵯峨嵐山駅(京都市内)

新横浜駅から京都駅までの区間を東海道新幹線に乗車し、前後の在来線列車に乗り継ぐケースを想定します。

【横浜市内】

横浜駅は、横浜市内ゾーンの中心駅です。JR線、相模鉄道線、東急東横線・みなとみらい線、京急線が乗り入れる交通の要衝です。

横浜市内・川崎・鶴見線内

【京都市内】

嵯峨嵐山駅は、京都市内の西北、嵯峨野線(山陰本線)上に位置します。観光客にとって便利な駅です。

特定都区市内制度京都市内

EX-IC料金+在来線のIC運賃【普通車指定席:通常期】

【EX-IC料金(新幹線特急料金込み)】
新横浜駅→京都駅:13,050円

【在来線IC運賃】
横浜駅→新横浜駅:178円
京都駅→嵯峨嵐山駅:240円

【総額】
13,468円

全区間通しの普通乗車券+e特急券【普通車指定席:通常期】

【全区間の普通乗車券】
横浜市内→京都市内:8,030円

【e特急券】
新横浜駅→京都駅:5,020円

【総額】
13,050円

ここからは、スマートEX料金のお話です。

「スマートEX」料金のシミュレーション

スマートEXについても、上記の設例にて値段を比較します。

設例1:新宿駅(東京都区内)→ 京橋駅(大阪市内)

東京駅から新大阪駅までの区間を東海道新幹線に乗車し、前後の在来線列車に乗り継ぐケースです。ここでは、通常期にてシミュレーションします。

スマートEX料金+在来線のIC運賃【普通車指定席:通常期】

【スマートEX料金(新幹線特急料金込み)】
東京駅→新大阪駅:14,520円

【在来線IC運賃】
新宿駅→東京駅:208円
新大阪駅→京橋駅:190円

【総額】
14,918円

全区間通しの普通乗車券+無割引の新幹線特急券【普通車指定席:通常期】

【全区間の普通乗車券】
東京都区内→大阪市内:8,910円

【新幹線特急券】
東京駅→新大阪駅:5,810円

【総額】
14,720円

設例2:横浜駅(横浜市内)→ 嵯峨嵐山駅(京都市内)

新横浜駅から京都駅までの区間を東海道新幹線に乗車し、前後の在来線列車に乗り継ぐケースです。通常期にてシミュレーションします。

スマートEX料金+在来線のIC運賃【普通車指定席:通常期】

【スマートEX料金(新幹線特急料金込み)】
新横浜駅→京都駅:13,300円

【在来線IC運賃】
横浜駅→新横浜駅:178円
京都駅→嵯峨嵐山駅:240円

【総額】
13,718円

全区間通しの普通乗車券+無割引の新幹線特急券【普通車指定席:通常期】

【全区間の普通乗車券】
横浜市内→京都市内:8,030円

【新幹線特急券】
新横浜駅→京都駅:5,470円

【総額】
13,500円

料金シミュレーションの総括

普通車指定席に絞って、商品(きっぷ)別に料金の試算を行いました。冒頭でもお出ししましたが、8パターンの料金計算の総額を一覧表にまとめ、直感的に比較したいと思います。

設例1:新宿駅(東京都区内)→ 京橋駅(大阪市内)

きっぷの組み合わせ総額(円)
在来線IC乗車+EX予約チケットレス【EX会員】14,628
普通乗車券+e特急券【EX会員】14,230
在来線IC乗車+スマートEXチケットレス14,918
普通乗車券+新幹線特急券(無割引)14,720
再掲

新幹線乗車区間の前後ともJR在来線に乗り継ぐパターンです。特定都区市内制度を活用できる紙のきっぷ(普通乗車券)を利用することで、総額ではチケットレス乗車するよりも安くなります。

設例2:横浜駅(横浜市内)→ 嵯峨嵐山駅(京都市内)

きっぷの組み合わせ総額(円)
在来線IC乗車+EX予約チケットレス【EX会員】13,468
普通乗車券+e特急券【EX会員】13,050
在来線IC乗車+スマートEXチケットレス13,718
普通乗車券+新幹線特急券(無割引)13,500
再掲

設例1と全く同じ結果です。チケットレス乗車すると楽ですが、料金が気になる場合は事前に試算をおススメします。場合によっては、紙のきっぷの利用も検討していただきたいです。

これらの事例では、特定都区市内制度が適用された紙のきっぷの方がたまたま安かったです。しかし、その逆の結果ももちろんありえます。JR在来線に乗り継ぐ回数でそれぞれ結果が違うので、その都度総額を試算することをおススメします。

スマートフォンアプリやツールを利用して試算

東海道新幹線東京駅発車標

複雑な料金体系から適切な料金を手計算で算出するのは、非常に困難です。そのため、スマートフォン用アプリやウェブ上のツールを利用すると便利です。

スマートフォン用アプリ

鉄道の運賃・料金を計算するアプリは多数あるため、自分にとって使い慣れたものを使用するとよいでしょう。いずれのアプリでも、運賃・料金の総額はもちろんのこと、乗車区間や乗車日による料金の変動も確認できます。

筆者が活用しているのは、「乗換案内」の有料版です。このアプリには、普通車指定席・普通車自由席・グリーン車といった設備や、EX予約・スマートEXの商品種別ごとの比較機能が付いています。複雑な条件であっても、即座に総額を比較できます。

JR東海が提供しているウェブツール

しかし、EX予約やスマートEX料金を表示できるスマートフォンアプリは限られています。そこで、JR東海が展開している公式のウェブツールを活用したいです。

JR東海のウェブサイトには、無料で利用できる「EX予約運賃ナビ」および「スマートEX運賃ナビ」が用意されています。区間別に、各設備の比較が一発で可能です。

EX予約運賃ナビ

EX予約会員用料金の確認と紙のきっぷとの比較が可能です。

EX予約運賃ナビ

スマートEX運賃ナビ

スマートEX用料金と紙のきっぷの値段を比較できます。

EXサービス運賃ナビ

まとめ

東海道新幹線東京駅駅名標

特定都区市内制度が適用されない「EX予約」「スマートEX」料金の弱点をカバーするためには、特定都区市内制度が適用された普通乗車券をうまく利用したいです。

EX予約会員に限りますが、新幹線特急券部分が「e特急券」として安価に提供されています。普通乗車券を併用すると、JR在来線に乗り継ぐ場合、旅費の節約につながります。

一方、紙のきっぷを発券しないでチケットレス乗車する場合、大人200円引きです。在来線の乗り継ぎがなければ、チケットレス乗車が適切です。

当記事では試算を行いませんでしたが、自由席を利用する場合は要注意です。特に、特定都区市内制度が適用されないスマートEXの自由席料金は、特定都区市内制度が適用される[普通乗車券+新幹線自由席特急券]の組み合わせと同額です。前後の在来線乗り継ぎがある場合、紙のきっぷを購入しましょう。

大都市間を新幹線で移動する場合、特定都区市内制度をよく理解しておくと、賢く節約できます。

この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!

参考資料

● EX予約運賃ナビ(JR東海)2025.01閲覧

● スマートEX運賃ナビ (JR東海)2025.01閲覧

● 乗換案内アプリ(ジョルダン)

当記事の改訂履歴

2025年01月05日:当サイト初稿(リニューアル)

2023年5月21日:前サイト初稿

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