岩手県の三陸海岸沿いを走る、第三セクターの「三陸鉄道」。かつてのNHKドラマ「あまちゃん」の舞台になった路線です。
三陸鉄道リアス線は、盛駅(岩手県大船渡市)から釜石駅(岩手県釜石市)、宮古駅(岩手県宮古市)を経て、久慈駅(岩手県久慈市)までを結ぶ、延長163.0kmの長大な路線です。現在では「三陸復興国立公園」のエリアを結ぶ鉄道として、地域交通の足だけでなく、観光で訪れるための交通手段にもなっています。
2022年に限定発売された「特別設定 Web限定 大人の休日パス スペシャル」を利用して、念願だった三陸鉄道の全線踏破を果たすことができました。単に列車に乗車するだけではなく、乗務員さんや駅員さんとのふれ合いも経験しました。
三陸鉄道には、硬券や補充券といった手売りきっぷが残っています。乗り鉄だけでなく、きっぷ収集も楽しめる路線です!
この記事では、三陸鉄道へのアプローチをお話しした上で、乗車に必要なきっぷをご提案します。そして、筆者の全線踏破の道中、手に入れた手売りきっぷの数々をご紹介したいと思います。
- 三陸鉄道線内の有人駅では、手売りきっぷを購入できること
- 三陸鉄道線を全線乗車するには企画乗車券の利用が便利なこと
- 途中駅にあるホテルで1泊すると旅程に余裕ができること
三陸鉄道線に入るためのアプローチ
三陸鉄道が走る岩手県三陸海岸は、2011年3月に発生した東日本大震災の被害を受けました。旧JR東日本山田線の宮古駅から釜石駅までの区間も被害を受け、長い間不通でした。その区間が2019年に復旧する際、経営が三陸鉄道に移管されました。JR山田線で分断していた路線ネットワークが一本につながった瞬間でした。
率直なところ、三陸鉄道線内に入るまでの道のりがとても遠く感じます。地図を見ても、東北新幹線が走る地域から直線距離で数十キロ離れていることが分かります。
三陸鉄道線に入る玄関口となる駅は、冒頭で申し上げた盛駅、釜石駅、宮古駅、久慈駅です。それぞれの駅に接続するJRの路線は、次の通りです。
- 盛駅:JR大船渡線BRT(東北新幹線一ノ関駅から気仙沼駅経由)
- 釜石駅:JR釜石線(東北新幹線新花巻駅)
- 宮古駅:JR山田線(東北新幹線盛岡駅)
- 久慈駅:JR八戸線(東北新幹線八戸駅)
接続するこれらのJR線の列車本数は、総じて少ないです。したがって、大都市である仙台市内や首都圏から三陸鉄道線に至るまでが、決してたやすくないです。筆者にとっても、三陸鉄道は、たどり着くまでなかなかハードルが高い路線でした。
鉄道で入るのが困難な一方、高速道路の三陸沿岸道路が2021年に全通しました。仙台市からの高速バスの運行が始まっているので、三陸地方に行くだけであれば、バスを利用した方が早く便利です。
三陸鉄道線乗り通しの所要時間・旅程
全長163.0kmの三陸鉄道リアス線。全線を乗り通すのに必要な所要時間は、休憩なしで概ね4時間です。盛駅から久慈駅まで乗り換えなしでぶっ通しで走る列車が、日中時間帯に久慈駅行きの下り線で2本、盛駅行きの上り線で1本あります。
その間、列車から降りないで、全線乗り通すのは相当ハードです。そのため、途中の釜石駅や宮古駅で小休止を入れるのがいいアイデアではないでしょうか。
途中の宮古駅の中には、「さんてつや」という三陸鉄道直営のお店があって、オリジナルグッズや土産物を売っているので、ぶらつくと楽しいです。
盛駅がある大船渡市や釜石市、宮古市にはチェーンホテルがあるので、途中で1泊すると充実した旅程になるかと思います。
三陸鉄道リアス線の運賃・きっぷ
盛駅から久慈駅まで三陸鉄道線を乗り通すために必要なきっぷには、次のものがあります。
乗り鉄に利用できる乗車券・フリーきっぷ
● 普通乗車券
三陸鉄道において、普通乗車券では途中下車できません。全線を乗り通すには、以下の企画乗車券が適しています。
● 全線フリー乗車券
全区間を2日間乗り放題で、大人6,100円(小児3,050円)です。金額自体は高額ですが、2日間かけて線内を行ったり来たりしたい場合には、おトクだと思います。
● 片道途中下車きっぷ
普通乗車券では途中下車できないため、「片道途中下車きっぷ」が企画乗車券として発売されています。
盛駅と久慈駅の区間の値段は、大人3,780円(小児1,890円)と、普通乗車券と同額です。他に、途中区間用のきっぷも発売されています。いずれも2日間有効なので、三陸鉄道線内で1泊しながらゆっくり乗り通せます(行ったり来たりできません)。
● 「大人の休日俱楽部パス」を使用
「大人の休日俱楽部」会員限定のきっぷですが、フリー乗車区間に三陸鉄道線が含まれています。上記の「全線フリー乗車券」と同じ効力があります。三陸鉄道までの鉄道運賃、三陸鉄道線内の運賃ともに高額なので、パスを利用できるのが強みです。
大人の休日俱楽部パスの他、JR東日本から単発で発売される各種パス類でも、三陸鉄道線に乗車できる場合があります(過去の発売例:キュンパス)。
線内で購入できるきっぷについて
三陸鉄道線内の主要駅である盛駅、釜石駅、宮古駅、久慈駅には、きっぷの券売機があります。しかし、窓口で買える区間もあります。その場合、受け取るきっぷは、硬券です。
その他の駅には券売機がないため、出札窓口のある駅では硬券のきっぷを確実に入手できます(営業時間にはご注意を)。
入場券と片道普通乗車券は小さなB型硬券で、往復乗車券は大きなD型硬券です。
その他、同社の旅客営業規則に記載がある通り、記入式と入鋏式の補充券もあります。全区間に硬券があるわけではないため、補充券が使われることがあり得ます。特色ある駅名が多い三陸鉄道線内の手書きのきっぷはとてもユニークで、よい旅の記念になります。
それでは、三陸鉄道線の様子と手売りきっぷを写真でご覧いただきます!
筆者の三陸鉄道線乗り通しの道中
首都圏から三陸鉄道線に鉄道で入る場合、1日で全線を乗り通すのは、時間的に非常にハードです。筆者は日中の車窓を楽しみたいので、日没後空が暗くなったら投宿するようにしています。
盛駅→釜石駅(南リアス線)
普通217D:盛駅 18:20分 → 釜石駅 19:07分
筆者はJR大船渡線BRTで夕方盛駅に入り、三陸鉄道リアス線の道中が始まりました。
筆者は「大人の休日パス スペシャル」を持っていたため、そのきっぷで三陸鉄道線に乗車できました。しかし、きっぷ鉄のミッションをクリアするために、三陸鉄道線の駅舎にある売店兼出札窓口で、きっぷを何枚か購入。往復乗車券は高額なものばかりだったので、予算の少ない筆者としてはスキップすることになりました。
三陸鉄道線の車両が入線。BRTに長い間乗車した後の鉄道乗車は、8時間ぶりでした。
車内の様子。BRTの狭い座席とはうって変わって、ボックスシートがとても清潔で快適です。夕方の列車ということもあり、すべてのボックスが埋まる程度の乗客がいました。
盛駅を出発した時は、すでに日没後でした。南リアス線の区間はほとんどがトンネルの中で、景色が見えなくてもあまり関係なしでした。
盛駅で出していただいた乗車券類。駅名が三陸海岸らしいです。補充片道と補充往復は三陸鉄道にはありません。
釜石駅に着いたのは19時で、すぐに駅ナカのホテルフォルクローロに投宿。乗り鉄の道中で利用するホテルとしては、一択でした。
釜石駅→宮古駅(リアス線)
普通1007D:釜石駅 7:50分 → 宮古駅 9:14分
朝は早めに出発して、三陸鉄道線を北上。旧JR山田線の区間を走ります。歴史が古い路線のためトンネルが少なく、景色が美しい区間です。
釜石駅の出札窓口が開くのが朝8時なので、釜石駅でのきっぷのお買い物は断念。
景色がいい区間イコール東日本大震災の被害を一番受けた区間ということで、運行が再開されてからあまり時間が経っていません。平日の午前中ということもあって、乗客は少なく、車内は静かでした。
途中「吉里吉里」(きりきり)駅というおもしろい名前の駅があります。手書ききっぷのいいネタです。
この列車は久慈駅ゆきでしたが、宮古駅で途中下車。
宮古駅→久慈駅(北リアス線)
普通5111D:宮古駅 10:40分 → 久慈駅 12:34分
宮古駅の駅舎。三陸鉄道の拠点という割には、こじんまりとしています。
次の久慈駅ゆきの1本後の列車を待つ間、駅ナカのショップ「さんてつや」をチェック。「鉄道ダンシ」というキャラクターがあって、「驚き桃の木山椒の木」という気分でした(笑)。人気商品ということなので、クリアファイルを1枚だけ購入。
宮古駅でも、きっぷを一通りお買い物。宮古駅は三陸鉄道の拠点駅なので、出札窓口の営業時間が長く、アプローチしやすいです。手頃な値段の往復乗車券があったので、しっかりゲット。
宮古駅を出発し、北リアス線の区間を一路久慈駅へ。日中の列車は、相変わらず閑散としていました。
途中、反対列車の交換待ちで、何か所かの駅で小休止。その他に、白井海岸駅と堀内駅の間にある橋で数分間停止し、高所からの眺めを楽しめました(日中走る5111Dと115Dは、橋上での停車時間が数分間あります)。
普代駅から、旧国鉄久慈線の区間を北上。ここまでくると、険しいリアス式海岸が終わり、平坦な区間を走ります。
終点の久慈駅に到着し、三陸鉄道リアス線の乗り通しが終了。車内に掲示された運賃表が、フル表示です。
久慈駅の駅舎内にも売店兼出札窓口があり、きっぷやお土産物が買えます。
途中通った田老駅と新田老駅のネーミングが気になったので、ここできっぷを書いてもらいました。
おわりに
1泊2日にわたって乗車した三陸鉄道線。車両がきれいで、座り心地よい車内では静かに快適に過ごせました。
何より、乗務員さんや駅員さんたちがフレンドリーで、きっぷを買う時にもとても親切に対応していただけました。末筆ながら、感謝申し上げます。
「大人の休日俱楽部パス」で乗車できるので、お財布にやさしいです。新幹線での高速移動に疲れたと思ったら、三陸鉄道線でのスローな乗り鉄もおススメです。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考資料 References
● 三陸鉄道公式ウェブサイト
● 「大人の休日俱楽部」公式ウェブサイト おトクな会員限定きっぷ(JR東日本)
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2024年02月26日:当サイト初稿(リニューアル)
2022年6月25日:前サイト初稿
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