埼玉県秩父市やその周辺の町には多くの観光スポットがあり、鉄道を利用してめぐる方も多いのではないでしょうか。秩父地区内を走る秩父鉄道線が、秩父神社、三峯神社、長瀞などの観光スポットを結んでいます。
東京から秩父地方に入るにはいくつかの経路がありますが、王道はありません。秩父地方に入る経路によって、最適なフリーきっぷがあります。
この記事では、東京から埼玉県秩父地方へ向かうのにおトクなフリーきっぷ、そして秩父地区内をめぐるのに便利なフリーきっぷをご紹介し、それぞれの特長を比較したいと思います。
- [往復分+現地フリー]のタイプと[現地フリー]のみのタイプがあること
- 西武鉄道が発売する2種類のフリーきっぷが一番おトク
- 東武東上線を利用するなら「SAITAMAプラチナルート乗車券」がイチ推し
4種類のフリーきっぷからの迷える選択
筆者は、毎年訪れる三峯神社(埼玉県秩父市)や西武秩父駅構内にある祭の湯、長瀞町の中心部でみられる秋の紅葉を楽しむために、秩父地方に足を運びます。そして、秩父鉄道線の乗り鉄自体に秩父鉄道線をよく利用します。東京から秩父鉄道線内に入る主なルートとして、次の3つが考えられます。
- 西武池袋線・秩父線を利用して西武秩父駅から入る
- 東武東上線を利用して寄居駅から入る
- JR高崎線を利用して熊谷駅から入る
JR東日本と秩父鉄道がコラボしたフリーきっぷは残念ながらありませんが、西武鉄道と東武鉄道からは秩父鉄道とコラボしたフリーきっぷがそれぞれ発売されていて、おトクに移動できます。
西武鉄道が発売するフリーきっぷには「秩父フリーきっぷ」と「秩父漫遊きっぷ」の2種類があります。
東武鉄道・秩父鉄道が発売するフリーきっぷは「SAITAMA(さいたま)プラチナルート乗車券」です。
秩父鉄道も独自のフリーきっぷを発売していて、デジタルきっぷ版「秩父路遊々フリーきっぷ」があります。
西武線から秩父鉄道線に乗車する場合には「秩父フリーきっぷ」が、祭の湯等を利用する場合には「秩父漫遊きっぷ」が最適です!
これらの4種類のフリーきっぷは、それぞれ違った特長があります。それらの中から、皆さまの移動スタイルに合ったものをご自身で選んでいただきたいです。それぞれのきっぷの特長をこれからご説明します。
秩父鉄道線内のフリー乗車区間が各きっぷで異なる
いま申し上げた4種類のきっぷの違いはなかなか分かりにくいのですが、秩父鉄道線内のフリー乗車区間の違いが、各きっぷの選択のポイントになります。
上図に示した区間が、各フリーきっぷの秩父鉄道線内におけるフリー乗車区間です。いずれのきっぷも長瀞、秩父市街、三峰口までの範囲をカバーしています。西武鉄道発売のフリーきっぷには接続駅の御花畑駅が含まれ、東武東上線がフリー乗車区間の「SAITAMAプラチナルート乗車券」には接続駅の寄居駅が含まれる点に注目しましょう。
なお、「秩父漫遊きっぷ」には秩父鉄道線内のきっぷが含まれない点に留意したいです。
それでは、各きっぷの詳細を見ていきましょう!
秩父フリーきっぷ(西武鉄道)
「秩父フリーきっぷ」は、西武鉄道から発売されているフリーきっぷです。西武線内の駅からの往復の乗車券部分と秩父鉄道線内の一部の区間が2日間乗り放題になるフリーきっぷ部分で構成されるきっぷです。
デジタルきっぷ版と、従来からの紙のきっぷ版の2種類があります。きっぷの効力や値段には差がないので、ご自身にとって使いやすいものを選択しましょう。
デジタルきっぷ版
デジタルきっぷ版の「秩父フリーきっぷ」は、小田急電鉄が展開する「EMot(エモット)」オンラインサービスから購入可能です。スマートフォンが必携で、オンライン決済が必須になります。
紙のきっぷ版
従来から西武線内の各駅(高麗駅より西武秩父駅方の駅を除く)で発売されているのは、紙のきっぷ版です。現金か交通系ICカードの残高から決済します。
秩父フリーきっぷは1枚構成で、出発からフリー乗車区間での乗り降り、そして帰着まで1枚のきっぷを使い続ける形です。
きっぷの値段・効力(共通)
デジタルきっぷ版と紙のきっぷ版とでは、きっぷの値段や内容、効力に差はありません。以下の内容は、両者で共通です。
● 発売日・有効期間:
通年発売(乗車当日の購入可)2日間有効
● フリー乗車区間:
西武秩父線 芦ヶ久保駅ー西武秩父駅 / 秩父鉄道線 野上駅ー三峰口駅
● 主な駅からの運賃額【2024年10月以降】
駅名 | 大人金額 | 小児金額 |
池袋 | 2,440 | 1,220 |
西武新宿 | 2,440 | 1,220 |
高田馬場 | 2,440 | 1,220 |
国分寺 | 2,180 | 1,100 |
所沢 | 2,000 | 1,020 |
飯能 | 1,760 | 880 |
上表の金額は、990円相当分の秩父鉄道線内フリーきっぷの部分と西武線の往復の乗車券の部分を加算したものです。
特急「ラビュー」や「S-TRAIN」「SLパレオエクスプレス」号に乗車する場合は、特急券や座席指定券が別にかかります。
フリーきっぷの有効期間が2日間あるため、秩父で1泊して2日間にかけて移動する場合には、断然おトクなきっぷです。西武線内の発駅からの運賃も割引になるため、このきっぷの商品性は高いと思います。
秩父漫遊きっぷ(西武鉄道)
「秩父漫遊きっぷ」も西武鉄道から発売されています。西武線内の駅からの往復の乗車券部分と、西武秩父線高麗駅ー西武秩父駅間のフリーきっぷ部分(2日間乗り放題)、そして秩父現地で使えるクーポンの部分から構成されます。
「フリー乗車区間」の違いと「現地で使えるクーポンが付くか付かないか」の違いが、いまお話しした「秩父フリーきっぷ」との違いです。「秩父漫遊きっぷ」にはデジタルきっぷ版はなく、紙のきっぷ版だけです。
● 発売日・有効期間:
通年発売(乗車当日購入可)、2日間有効
● 発売箇所:
西武線内各駅(高麗駅より西武秩父駅方の駅を除く)
● フリー乗車区間:
西武秩父線 高麗駅ー西武秩父駅
● 現地クーポンが使える主な施設:
西武秩父駅にある祭の湯(入浴・食事・買物:大人950円/小児480円分)、秩父地区の西武観光バスフリーパス(2日間有効)、トヨタレンタカー優待
● 秩父漫遊きっぷ 主な駅からの運賃額【通常の値段】
駅名 | 大人金額 | 小児金額 |
池袋 | 2,230 | 1,120 |
西武新宿 | 2,230 | 1,120 |
高田馬場 | 2,230 | 1,120 |
国分寺 | 1,990 | 1,020 |
所沢 | 1,830 | 940 |
飯能 | 1,630 | 820 |
上表の金額は、西武線の往復の乗車券の部分、フリー乗車区間の乗車券の部分、そして大人950円/小児480円相当の現地クーポンの金額を加算したものです。現地でクーポン対象の施設を利用する場合は、このきっぷを購入すると断然おトクです。
秩父漫遊きっぷの乗車券部分は、1枚で構成されています。発駅を出発してからフリー乗車区間での乗り降り、帰着まで同じきっぷを使います。
乗車券部分に付随して、「漫遊○得クーポン」が付いてきます。大人950円/小児480円分の価値がありますが、有効期間が過ぎるとただの紙切れになってしまうので、すぐに使い切りましょう。
SAITAMA(さいたま)プラチナルート乗車券(東武鉄道・秩父鉄道)
「SAITAMA(さいたま)プラチナルート乗車券」は、東武鉄道東上線・越生線全区間と秩父鉄道線のふかや花園駅よりも秩父寄りの区間のみ1日間乗り放題になるフリーきっぷです。東武東上線も全区間で1日乗り放題になる点が、このきっぷの大きな特長です。
● 発売日・有効期間:
通年発売(乗車当日購入可)、1日間有効
● 発売箇所:
東武東上線・越生線内各駅、および秩父鉄道線ふかや花園駅から秩父寄りの有人駅
● フリー乗車区間:
東武東上線・越生線全線 / 秩父鉄道線 ふかや花園駅ー三峰口駅
● 運賃額:
大人2,000円/小児1,000円【2024年10月以降】
東武東上線内の全駅がフリー乗車区間に含まれます。東武東上線に往復乗車して秩父鉄道線方面に出かける場合、東京都区内からであれば、往復するだけできっぷの元を十分に取れます。
東武東上線方面から秩父地方を訪れるだけでなく、ふかや花園プレミアムアウトレット(埼玉県深谷市)へのきっぷとしても活用できます。
秩父路遊々フリーきっぷ(秩父鉄道)【デジタルきっぷ版】
「秩父路遊々フリーきっぷ」は、秩父鉄道線の全区間が1日乗り放題のフリーきっぷです。JR高崎線で熊谷駅を経由して秩父地方に向かう場合、このフリーきっぷがとても便利です。
2023年3月をもって紙のきっぷの発売が終了し、2023年4月以降はデジタルきっぷとして発売されています。従来の紙のきっぷは週末限定でしたが、デジタルきっぷ化されてからは毎日利用できるようになりました。スマートフォンが必携で、小田急電鉄が展開する「EMot」アプリもしくはウェブブラウザからオンライン購入する形です。
● 発売日・有効期間:
通年発売(乗車当日購入可) 1日間有効
● 発売箇所:
「EMot」アプリもしくはウェブブラウザからオンライン購入
● フリー乗車区間:
秩父鉄道線 全線(羽生駅ー三峰口駅)
● 運賃額:
大人1,700円/小児500円【2024年10月以降】
熊谷駅から秩父鉄道線に乗車し、秩父方面に向かう場合の運賃が高額なため、単純に1往復すれば元を取ることが可能です。
秩父鉄道線内を走るSL列車「パレオエクスプレス」に乗車し、秩父鉄道線を往復する場合、乗車券部分としてこのフリーきっぷを購入するのが適しています(SL指定券は別料金)。
筆者のおススメきっぷ!~特急ラビューで秩父へ~
4種類のフリーきっぷをご紹介しましたが、一体どのきっぷがいいのでしょうか。筆者がこれらのきっぷを利用した体験から、おススメしたいきっぷを率直に申し上げたいと思います。
東京・池袋駅から西武秩父駅までの区間で特急「ラビュー」が走る西武池袋線・秩父線に乗車できる「秩父フリーきっぷ」もしくは「秩父漫遊きっぷ」を購入すると、新車両の快適な座席で旅を満喫できることに違いありません。
東武東上線全線がフリー乗車区間の「SAITAMAプラチナルート乗車券」は値段が格安なのですが、普通列車しか走っていません。秩父地方への快適な旅という観点でおススメできるのは、西武鉄道が発売する上記2種類のフリーきっぷです。
特急ラビュー「ちちぶ」号に関しては、別の記事(↓)に詳細をまとめてあります。是非ご一読ください!
まとめ
東京から秩父を訪れるには、西武線の「秩父フリーきっぷ」もしくは「秩父漫遊きっぷ」を利用して、2日間乗り放題を楽しむのが最もおトクです。西武線の両フリーきっぷの商品性はかなり高いと思います。
東武東上線沿線から利用する場合、あるいは一日で秩父と川越の両方を観光するような場合に限っては「SAITAMAプラチナルート乗車券」の利用が適しています。
西武線や東武東上線を利用しない場合は、秩父鉄道線内で発売されている「秩父路遊々フリーきっぷ」の利用を検討しましょう。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
Appendix-1:埼玉県民の日フリーきっぷ(秩父鉄道)
毎年11月14日は埼玉県民の日で、埼玉県内の鉄道会社からおトクなフリーきっぷが発売されます。
秩父鉄道でも「埼玉県民の日フリーきっぷ」が大人1,000円/小児500円で発売されます。
このフリーきっぷの効力は、前述した「秩父路遊々フリーきっぷ」と全く同じなので、埼玉県民の日には特売で格安でフリーきっぷを購入できると覚えておきましょう(埼玉県民でなくてもフリーきっぷを購入できます)。
Appendix-2:過去発売されていた秩父地方のフリーきっぷ
ここでは、過去発売されていた秩父地方をめぐるフリーきっぷを、備忘として残しておきたいと思います。
秩父市応援秩父漫遊きっぷ(西武鉄道)
2021年から2023年にかけて発売されていた期間限定のフリーきっぷです。秩父市の補助金が入ったことで、かなりおトクな値段できっぷを購入できました。
秩父路遊々フリーきっぷ(秩父鉄道)【紙のきっぷ版】
デジタルきっぷ版に変わる前は、紙のきっぷが発売されていました。土休日限定で大人1,600円/小児800円でした。
紙のきっぷ版は、2023年3月いっぱいで発売が終了しました。
長瀞秩父おでかけきっぷ(秩父鉄道)
「長瀞秩父おでかけきっぷ」が秩父鉄道線内で発売されていました。秩父鉄道線内の一部区間(寄居駅から秩父寄り)が1日乗り放題の区間限定版のフリーきっぷです。
2023年3月いっぱいで発売が終了しました。
参考資料 References
● 西武鉄道のフリーきっぷ(西武鉄道)2024.09閲覧
● 秩父鉄道のフリーきっぷ(秩父鉄道)2024.09閲覧
● Emotオンラインチケット(小田急電鉄)2024.01閲覧
当記事の改訂履歴 Revision History
2024年9月27日:初稿 修正
2024年4月24日:初稿 修正
2024年3月25日:初稿 修正
2024年01月23日:当サイト初稿(リニューアル)
2022年01月24日:前サイト初稿(原文作成)
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