JR東日本の駅ナカには、魅力的なお店が多くあります。駅ナカといっても、改札口を入らなくてもアクセスできるお店と、改札口を入らなければならないお店があります。
その中でも後者のお店には、東京駅における「グランスタ」、首都圏の主なターミナル駅における「エキュート」が含まれます。
さて、駅の改札口に入るには、乗車券もしくは入場券が必要です。列車に乗車してどこかに行く場合は乗車券を買えばいいのですが、同じ駅で改札口を出る場合、入場券を購入します。
そこで疑問なのが、駅の改札口に入るのに、紙のきっぷをわざわざ買わなければならないのかということです。普段使っている交通系ICカードを使用できないのでしょうか。
JR東日本の自動改札が設置されている駅で展開されている「タッチでエキナカ」。入場券を買う必要がなく、ユーザーにとってはとても楽な仕組みです!
当記事では、JR東日本の駅ナカに向かうのに便利な、Suicaなどの交通系ICカードで支払うことができる「タッチでエキナカ」というサービスをご紹介します。交通系ICカードを入場券代わりに使用するメリットと問題点を、詳しく考えていきたいと思います。
- 駅の改札口の中に入るには入場券が必要なこと
- JR東日本の主な駅では交通系ICカードで入場券の代用ができること
- 乗車と入場を自動改札機で判定できない問題点があること
原則は入場券(紙のきっぷ)を購入
列車に乗車する目的以外で駅の改札口の中に入るためには、多くの鉄道会社で入場料金が必要です。JR東日本管内の駅において駅ナカのお店を利用する場合も、その例外ではありません。
JR各社においては、運送約款である旅客営業規則第294条にて、入場料金(入場券)について規定されています。JR東日本管内では大人150円/子ども70円で、入場してから2時間以内で出場する条件付きです。
入場料金を支払うことは、原則的に入場券(紙のきっぷ)を購入することです。駅の窓口か券売機で入場券を買ってから、改札口を通ります。
駅の窓口や指定席券売機(一部の駅のみ)で入場券を購入した場合、マルス券といわれる大きなサイズ(8.5cm大)のきっぷを入手できます。入場券を持ち帰れば、駅ナカを利用した記念になることに間違いないでしょう。
しかし、紙のきっぷを購入することに違和感があるユーザーも多くいると推察します。駅ナカに入るのに、いちいち入場券を買わなければならないのでしょうか。
JR東日本の駅における画期的な入場サービス「タッチでエキナカ」
JR東日本がそのようなニーズを察知し、Suicaなどの交通系ICカードを入場券代わりに利用できる「タッチでエキナカ」と呼ばれるサービスを2021年から開始しました。紙のきっぷと同額で自動改札を出入りできます。
このサービスは非常に画期的で、紙のきっぷを買う煩わしさから解放されます。
そもそも駅ナカのお店に行くのに、どうして料金が必要なのかとお考えの方もいるのではないでしょうか。そのようなことから、駅ナカで買い物した場合において入場料金相当をポイントバックするキャンペーンが、期間限定で行われたことがあります。
しかし、物事には利点だけではなく問題点があるのが世の常です。このサービスの問題点については、後述したいと思います。
他の鉄道会社には類似したサービスはない
交通系ICカードを入場券として代用するサービスは、鉄道業界ではJR東日本が唯一です。他の鉄道会社では、入場券を購入して自動改札機を通る必要があります。
中には、東京メトロのように入場券の制度がない鉄道会社があります。駅ナカのお店を利用する場合、駅員と相談することになります。
エキュート大宮がある大宮駅に交通系ICカードで入場!
筆者が日頃利用するJR大宮駅(さいたま市大宮区)には、駅ナカのお店として「ルミネ」と「エキュート」があります。改札口を入らずに利用できるのはルミネで、改札口を入ったところにあるのがエキュートです。
エキュートの中にあるお店を利用するには、大宮駅を区間に含む乗車券か、大宮駅の入場券が必要です。入場券を購入する代わりに、交通系ICカードを利用できます。
このサービスを含め、入場券で改札口を入場する場合、2時間の時間制限があります。大宮駅の構内には飲み屋もあるので、2時間はあっという間です。
大宮駅の改札口には、モバイルSuicaを利用して入場しました。入場する段階では、列車に乗車してどこかの駅に行くのか、大宮駅で出場するのか確定していません。
エキュートでお買い物を済ませてから、入場した自動改札から出場しました。モバイルSuicaで出場したわけですが、入場料金分として150円が引き落とされました。
列車に乗車した場合は1円単位で運賃が引き落とされますが、「タッチでエキナカ」に関しては紙のきっぷと同じ10円単位で料金が引き落とされます。
自動改札を入場し、同じところから出場するだけの体験なので、至って呆気なかったです。とてもスムーズに駅の改札口の中に入れるので、便利なのは明らかです。
利用した体験を踏まえて、このサービスのメリット・デメリットを考えていきます!
「タッチでエキナカ」を利用するユーザー側の利点
このサービスを利用する利点は、紙のきっぷ(入場券)を購入する手間を省ける点に尽きます。
駅が混雑していてきっぷうりばや券売機に行列ができている場合、入場券を購入するのに時間がかかってしまいます。交通系ICカードを入場券として代用できれば、列に並ぶ必要がなく時間の節約になります。
ユーザーにとっては簡便という点でメリットがあるのですが、鉄道会社にとってはシステム構築が複雑で、かえってデメリットなのではないかという指摘があります。
「タッチでエキナカ」の問題点
交通系ICカードを入場券として代用するサービスは非常に先進的なのですが、筆者は多くの問題点があると考えています。
前述した通り、自動改札機では列車に乗車するのか、駅ナカを利用するだけなのかを判別できません。山手線エリアにもエキュートが複数ありますが、運用面で以下のような課題があります。
山手線に一周乗車するケースを、仮に考えます。交通系ICカードを使用して自動改札から入場し、山手線を一周乗車してから同じ駅の自動改札を出場すると、当該カードから引き落とされる金額は大人で150円です。駅ナカにいたのか、山手線の列車に乗車していたのか、防犯カメラを解析しない限り判定できません。
山手線を一周するためには、経路通りの普通乗車券を買うか、最低片道運賃の2倍を支払うかしなければならないにもかかわらず、このサービスが存在することによって150円で済んでしまうのです。
一方、他の鉄道会社においては、交通系ICカードを入場券代わりに使用することは認められていません。駅ナカのお店等を利用するには、入場券(紙のきっぷ)を購入する必要があります。そのため、列車に乗車しないよう抑止することが可能です。
「タッチでエキナカ」があまりにも先進的なだけに、このようなリスクをはらんでいます。
当記事に関連し、山手線を一周乗車する場合、運賃額は一体いくらかかるのか検討してみました。詳しくは、以下の記事(↓)をどうぞご一読ください。
まとめ
駅の改札口の中に入場するには所定の料金がかかり、原則的には入場券を購入することでその料金を支払います。
その中にあって、交通系ICカードを代用して入場料金を支払うことができるサービス「タッチでエキナカ」がJR東日本管内の主な在来線の駅で利用できます。これまで入場券が必要であった常識を打ち破ったサービスです。
入場券を購入する手間がないため、きっぷうりばが混んでいても時間を無駄にしなくて済みます。ただし、入場券を購入するわけではないので、記念となるものが手元に残らないデメリットがあります。
それ以上に、このサービスには、入場と乗車を判定できない問題点があります。2時間駅ナカにいても、2時間列車に乗車して同じ駅に戻ってきたとしても、自動改札機には見分けがつきません。
この問題点を是正するのは困難であることから、IC入場サービスを提供すること自体がリスクをはらんでいます。したがって、他の鉄道会社は同等のサービスの導入をためらうように思えます。
ユーザーにとってはとても便利な仕組みですが、鉄道会社にとってはメリットよりも課題の方が多いのではないでしょうか。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考資料 References
● JR東日本ニュースリリース:IC入場サービス「タッチでエキナカ」の開始について 2021.01.19付
● IC入場サービス「タッチでエキナカ」(JR東日本)2024.01閲覧
● 「タッチでエキナカ」入場券ポイントバック!(JRE POINT)2024.3閲覧
当記事の改訂履歴 Revision History
2024年3月29日:初稿 修正
2024年3月25日:初稿
コメント