JR九州管内の在来線特急列車や西九州新幹線のきっぷを安く購入できる「JR九州インターネット列車予約」。このサービスで、QRチケットを利用できるようになりました。
従来は、インターネットで予約購入してから列車に乗車するまでに、紙のきっぷの受け取りが必要でした。もっと便利になればいいのに、と思われていたのではないでしょうか。
2024年9月以降、きっぷを買うとQRチケットが発行されるようになりました。スマートフォンを持っていれば、紙のきっぷはもはや必要ありません。
筆者も、特急「みどり」号に乗って佐世保駅から博多駅まで移動する際、QRチケットを表示してチケットレスで乗車してみました。購入からQRチケットでの改札通過まで、とてもスムーズでした。
QRチケットを表示してチケットレス乗車するか、紙のきっぷを受け取るかを選択できます。チケットレス乗車にはクレジットカード決済が必須なので、状況によって使い分けると良いでしょう。
この記事では、JR九州管内で2024年9月に始まったチケットレス乗車サービス「ネット予約でQRチケレス」について、実際に利用した体験を皆さんと共有していきます。
- QRチケットで乗車できるのは一部のネット限定割引きっぷだけであること
- JR九州アプリがなくてもウェブブラウザから操作できること
- 紙のきっぷを受け取らない限り何度でも予約変更できること(一部を除く)
ネット予約ならではの安さとスムーズさを実感
JR九州管内を走る特急列車や観光列車「D&S列車」のきっぷを予約購入するためのネット予約サービスとして「JR九州インターネット列車予約」があります。
ネット限定で購入できる割引きっぷの値段がとても安いのが、このサービスの特長です。所定の値段のきっぷを駅で購入するととても高いだけに、ネット価格できっぷを安く買ってしまうと、もう元には戻れません。
例えば、筆者が利用した特急「みどり」号の所定の値段は、佐世保駅・博多駅間の普通車指定席で4,700円です(繁忙期)。それが、乗車日の3日前までに予約すれば購入できる「九州ネット早特3」では、値段が半額以下の2,040円にまで下がります。
しかし、ネット予約サービスできっぷを買ったものの、乗車する前に紙のきっぷを受け取る必要があるのが難点でした。ストレスを感じた方が多いのではないでしょうか。
その課題は、2024年9月に登場したQRチケット(QRコードを導入したデジタルきっぷ)でようやく解消されました。スマートフォンでその画面を表示すれば、紙のきっぷなしにそのままチケットレスで乗車できます。このサービスは「ネット予約でQRチケレス」と呼ばれ、予約画面や駅で見かけます。
このサービスの開始で、値段の安さと乗車する時のスムーズさを兼ね備えたと言えるでしょう。
安くて便利なので、個人的には十分に使えると思います。これから、きっぷを利用する前提となる基本的な情報をお伝えします!
「ネット予約でQRチケレス」の対象列車・料金および他料金との比較
それでは、QRチケットを利用して自動改札を通過する「ネット予約でQRチケレス」の対象列車を挙げた上で、ネット限定割引きっぷと所定の運賃・料金、高速バスの値段を比較していきます。
対象列車
JR九州博多駅(福岡市博多区)を発着する在来線特急列車が、利用の対象となる列車です。
具体的には、以下の特急列車が該当します。
- ソニック
- にちりんシーガイヤ(博多駅・佐伯駅間)
- きらめき
- リレーかもめ・かもめ
- かささぎ
- みどり
- ハウステンボス
- ゆふいんの森・ゆふ
特急「リレーかもめ」号については、接続する西九州新幹線「かもめ」号も利用対象に含まれます。なお、特急「かいおう」号については、利用対象外です。
「ネット予約でQRチケレス」利用対象のきっぷ
「ネット予約でQRチケレス」の利用対象となるきっぷは、以下のネット限定割引きっぷに限ります。
- 九州ネットきっぷ
- 九州ネット早特3
- かもめネットきっぷ
- かもめネット早特3
- 私たちも、かもめ。早特7【予約変更不可】
所定運賃・料金のきっぷや他のネット予約サービスで購入したきっぷについては、このサービスの利用対象外です。紙のきっぷで乗車する必要があります。
気になる料金について、高速バスとの比較を行います!
所定運賃・料金のきっぷや高速バス運賃との比較
九州地区には高速道路網が完備していることから、鉄道と高速バスが激しく競合しています。料金面でも両者が競い合っており、格安傾向にあります。
ここでは、QRチケットでの乗車が可能な代表的区間について、ネット限定割引きっぷと所定運賃・料金(定価のきっぷ)、高速バスの運賃との比較を行います。
● 博多駅・別府駅間
特急「ソニック」号が小倉駅(北九州市小倉北区)経由で、D&S列車「ゆふいんの森」号が久留米駅(福岡県久留米市)経由で運行されています。また、高速バス「とよのくに」号が、大分自動車道経由で走っています。
交通機関 | 名称 | 所要時間 | 運賃種別 | 値段 | 備考 |
鉄道 | 特急ソニック号 | 1時間55分 | 所定運賃・料金 | 6,470円 | 通常期・当日購入可 |
九州ネットきっぷ | 3,150円 | 通年・当日購入可 | |||
九州ネット早特3 | 2,550円 | 通年・3日前までに購入 | |||
高速バス | 西鉄バスとよのくに号 | 2時間20分 | 所定運賃 | 3,250円 | 通年・当日購入可 |
特急「ソニック」号の所要時間と値段が、高速バスよりもやや優勢です。特急列車の所定運賃・料金は非常に高額ですが、高速バスを意識してネット割引きっぷが安価に設定されています。
● 博多駅・長崎駅間
特急「リレーかもめ」号と接続する西九州新幹線「かもめ」号が走っています。また、高速バス「九州」号が、長崎自動車道経由で運行されています。
交通機関 | 名称 | 所要時間 | 運賃種別 | 値段 | 備考 |
鉄道 | 特急リレーかもめ号 | 1時間33分 | 所定運賃・料金 | 6,050円 | 通常期・当日購入可 |
かもめネットきっぷ | 4,200円 | 通年・当日購入可 | |||
私たち、かもめ。早特7 | 3,200円 | 通年・7日前までに購入【変更不可】 | |||
高速バス | 西鉄バス九州号 | 2時間07分 | 所定運賃 | 2,900円 | 通年・当日購入可 |
高速バスの運賃が、列車よりもかなり安いです。武雄温泉駅(佐賀県武雄市)での乗り換えがあっても列車の所要時間が短いですが、新幹線ということもあって価格設定が高めです。
● 博多駅・佐世保駅間
特急「みどり」号が運行されています。また、高速バス「させぼ」号が、長崎自動車道経由で走っています。
交通機関 | 名称 | 所要時間 | 運賃種別 | 値段 | 備考 |
鉄道 | 特急みどり号 | 1時間55分 | 所定運賃・料金 | 4,500円 | 通常期・当日購入可 |
九州ネットきっぷ | 2,350円 | 通年・当日購入可 | |||
九州ネット早特3 | 2,040円 | 通年・3日前までに購入 | |||
高速バス | 西鉄バスさせぼ号 | 1時間50分 | 所定運賃 | 2,310円 | 通年・当日購入可 |
WEB割引 | 2,260円 | 通年・当日購入可 |
所要時間、値段ともに、列車と高速バスが互角で、デッドヒートを演じています。乗車日3日前までにきっぷを購入できる場合、鉄道の「九州ネット早特3」が最安です。
ネット限定割引料金を利用すると、とてもおトクなことがお分かりいただけたことでしょう。それでは、QRチケットでチケットレス乗車する方法を見ていきます!
「ネット予約でQRチケレス」利用に必要な環境
「JR九州インターネット列車予約」上で「九州ネットきっぷ」等のネット限定料金を購入することで、QRチケットによる「ネット予約でQRチケレス」を利用できます。
QRチケットをスマートフォン上で表示し、チケットレス乗車するための条件は、次の2点です。
- クレジットカードでオンライン決済
- スマートフォンを一人づつ所持
QRコードは動的に生成される画面を使用するため、飛行機のようにQRコードを紙に印刷して持ち歩くことができません。
スマートフォンを持っていない場合、同行者のスマートフォンを利用します。もしくは、紙のきっぷをあらかじめ受け取ってから乗車します。
また、代金の決済をクレジットカードのオンライン決済ではなく、駅やコンビニで決済する場合、紙のきっぷを受け取ることになります。
QRチケットの購入方法・領収書の発行方法
QRチケットを購入するには、「JR九州インターネット列車予約」での予約および代金の決済が必須です。JR他社のネット予約サービスではQRチケットを利用できず、紙のきっぷを受け取って乗車することになります。
当記事では、JR九州アプリではなく、ウェブブラウザ上で操作することを前提にご説明します。
QRチケットの購入手順
以下の手順で予約と購入を済ませます。手順の途中で、QRチケットか紙のきっぷかを選択可能です。
1.ネット予約のトップページ上で発駅および着駅、乗車日、人数を入力すると、購入できるきっぷの種別と値段が表示されます。
2.次の画面で、座席位置を指定します。どのきっぷを買ったとしても、指定席であればこのステップで座りたい座席を選べます。
3.QRチケットの利用条件がそろっている場合、QRチケットを使用するか紙のきっぷを受け取るかを選択できます。JR九州の場合、チケットレス乗車を強制されることはありません。
4.決済手段を選択します。前のステップでQRチケットを選択した場合、クレジットカード以外選択できません。
5.予約内容を確認し、購入を完了します。
6.購入が完了すると、5桁の予約番号が表示されます。QRチケットを使用するには、購入履歴から該当するきっぷを選択します。駅できっぷを受け取る場合、この予約番号と決済に使用したクレジットカードが必要です。
QRチケットと紙のきっぷの切り替え
紙のきっぷを受け取る前であれば、QRチケットと紙のきっぷのいずれを使用するかを切り替えられます。
この画面が表示されている場合、紙のきっぷを受け取る形です。[乗車方法をQRチケットへ変更する]を押すと、QRチケットに切り替わります。
QRチケットに切り替わると、「ネット予約でQRチケレス」のロゴが表示されます。[チケット表示]を押すと、QRチケットの表示が可能です。
領収書の発行方法
「JR九州インターネット列車予約」では、きっぷの購入履歴から領収書を表示したいきっぷを選択します。HTML形式で領収データを表示できるので、宛先が必要ならば入力してから、紙に印刷するかPDF形式で保存します。
インボイスの登録番号が表示されているため、この領収書を証憑(しょうひょう)として経費精算が可能です。
きっぷの様式【QRチケット・紙のきっぷ】
「JR九州インターネット列車予約」で購入したきっぷの様式は、以下の通りです。
QRチケット
「ネット予約でQRチケレス」を利用するには、以下のチケットをウェブブラウザかアプリで表示します。スクリーンショットを使ったり、紙に印刷して持参することはできません。
購入履歴から表示できることはもちろん、購入完了時に送信されるメールに記載されたリンクを踏んでも、QRチケットを簡単に表示できます。
QRコードが画面の中ほどに位置しているため、画面のスクロールが必要です。実際の画面では、赤い列車が時計回りで走っています。
紙のきっぷ
従来からの紙のきっぷは、乗車券部分(A券)と特急券部分(B券)の2枚構成です。紙のきっぷを見ると、乗車券・特急券の金額内訳やきっぷの有効期限、使用条件が分かります。
(A券)
(B券)
クレジットカードでオンライン決済した場合、ご利用票が出力されます。
お待たせしました。ここから、筆者が実際に使用したQRチケットの使い勝手をレポしたいと思います!
QRチケットで自動改札を通ってみた~使用方法のデモンストレーション~
「ネット予約でQRチケレス」サービスが始まってから、ちょうど2か月経った2024年11月の土曜日。特急「みどり」号に乗車して佐世保駅から博多駅まで移動するのに、QRチケットと紙のきっぷの両方を使用してみました。
大半の駅ではスタンド式改札から入場
佐世保駅の自動改札機にはQRチケットリーダーが設置されていない代わり、有人改札の脇にスタンド式改札が設置されています。
「ネット予約でQRチケレス」用のQRチケットのみならず、長崎エリアで有効な「片道デジタルきっぷ」や「My Route」というアプリで発売されているデジタルフリーきっぷの改札も、このスタンド式改札を利用します。
この日乗車する特急「みどり」16号のQRチケットを、スマートフォン上で表示してから、QRチケットリーダーにかざしました。スマートフォンを裏返しにし、QRコードをリーダーに読み込ませます。読み込みに成功すると、その旨モニターに表示されます。
改札を通過したところでQRチケットの画面を更新すると、画面が緑色に変わりました。自動で画面が切り替わらないため、自分で更新する必要があります。
QRコードを利用する多くのサービスでは、チケットの画面が自動でログオフされてしまうことが多いです。しかし、「ネット予約でQRチケレス」のQRチケットに関してはログオフされないようになっています。いつの間にかQRコードが消えていることがなくて、安心です。
博多駅では一般的な自動改札機から出場
この日のみどり16号は大幅に遅延し、博多駅には定刻の65分遅れで到着しました。あいにく特急料金の払いもどしはないため、そのまま改札口を出場。遅延の影響もあり、博多駅の中央改札口は、多くの人であふれかえっていました。
博多駅では自動改札機の一部にQRチケットリーダーが設置されていて、交通系ICカードと「ネット予約でQRチケレス」QRチケット用になっています。
佐世保駅で入場時に表示したQRチケットを、再びQRチケットリーダーにかざしました。リーダーには[QRコードをタッチ]と表示されていますが、スマートフォンをタッチさせるのではなく、かざしてQRコードを読み込ませます。
リーダーの感度が悪く、うまく読み取れない端末がありました。そこで、近くにある他の端末で試したら、QRチケットをすんなり読み込めて、無事に出場。
QRチケットの画面表示を再び更新すると使用後の状態に変わり、画面がグレーになりました。ウェブブラウザ版のQRチケットはすぐに消えることなく、後日でも参照できました。
QRチケットの使用感はなかなか良好
QRコードが表示されるデジタルきっぷは、表示が不安定でいつの間にか消えてしまっていることが多いです。そのため、改札口で慌ててしまうことが多くあります。
しかし、JR九州の「ネット予約でQRチケレス」の使用感は決して悪くなく、なかなか良い体験ができました。その理由は、以下の通りです。
- 予約購入画面でQRチケットと紙のきっぷの切り替えがしやすい
- QRチケットの表示がタイムアウトにならない(ウェブブラウザ版)
- QRチケットの利用状況が色で確認できて分かりやすい
使ってみて印象的だったのは、一定時間後に画面表示がタイムアウトとなってしまわないおかげで、QRチケットの表示が安定していました。そのため、改札口で慌てることがありませんでした。
JR九州におけるQRチケットの展開が他社よりも後発なだけあって、使い勝手がよく練られているように思います。
「ネット予約でQRチケレス」の課題
きっぷ購入から自動改札通過までの操作性に一貫性がある「ネット予約でQRチケレス」サービスの使用感は、とても良好です。しかし、課題もあります。
- スマートフォンが必須な点
- クレジットカードによる決済が必須な点
- 対応する自動改札機の数が少ないこと
現在では多くの人がスマートフォンを所持しますが、未成年者やシニア層まで行き渡っているとは言えません。
そこで、「ネット予約でQRチケレス」では、スマートフォンを持つ人が全員分のQRチケットを代行して読み込ませることが推奨されています。しかし、自動改札機でQRコードをかざして他人を先に通すという行為が煩わしいことはもちろん、筆者個人的には怪しい行為であると思います。
この場合、素直に紙のきっぷを利用した方が無難だと思います。
スマートフォンを利用する仕組みである以上、通信異常や電池切れが発生するような状況では正常に機能しないリスクもあります。
QRチケットを利用するためには、購入時にクレジットカードでオンライン決済しなければなりません。未成年者など、クレジットカードを持たない層が一定数いるので、全員が利用できないことを認識する必要があるでしょう。その点、紙のきっぷを選択できるのはユーザー思いです。
QRチケットを選択するユーザーが増加すると、QRチケットリーダーが設置された自動改札機が不足する懸念があります。実際に、博多駅の改札口は常時混雑しています。スマートフォンをQRチケットリーダーにかざす操作に慣れていない人が多いので(筆者も下手です)、かざしやすいように工夫すると良いのではないでしょうか。
まとめ
JR九州が展開するネット予約サービス「JR九州インターネット列車予約」において、チケットレス乗車のためのQRチケットを予約購入できるのが「ネット予約でQRチケレス」と呼ばれる乗車サービスです。
このサービスの対象は、博多駅を発着する在来線特急列車のネット限定割引きっぷに限定されます。高速バスと競合している区間を走るため、料金設定がとても安価です。
特急列車の予約購入に限っては、「JR九州インターネット列車予約」サイトの操作感は良好で、表示されるQRチケットの使用感も安定しています。
QRチケットの利用には、基本的には1人1台のスマートフォンが必要です。そのため、1人での利用には非常に向いていますが、ファミリーが活用するには若干難があります。
また、購入時におけるクレジットカードでのオンライン決済が必須であることから、利用できる層を選んでしまうことは否定できません。
いくつかの課題はありますが、総じて使い勝手が良く、十分に実用的なサービスと言えるでしょう。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考資料
● JR九州ニュースリリース「「JR九州インターネット列車予約」の利用がスマホで便利に~QRコードを使用したチケットレスサービスがはじまります」2024.9.20付
● 「ネット予約でQRチケレス」ウェブサイト(JR九州)2024.12閲覧
● 西鉄バスウェブサイト 2024.12閲覧
当記事の改訂履歴
2024年12月11日:当サイト初稿
コメント