臨時特急「鎌倉」号は使えるか?~きっぷの買い方の解説・コスパとタイパの考察~

特急鎌倉号鎌倉駅にて 列車別のきっぷ

臨時特急「鎌倉」号という列車が、武蔵野線の吉川美南駅と鎌倉駅を結んでいます。武蔵野線内の主な駅に停車し、途中横浜駅を経由して北鎌倉駅/鎌倉駅まで直通します。

この列車は、長い間「ホリデー快速鎌倉」号として親しまれていました。2022年10月に快速列車から特急列車に格上げされ、列車名も特急「鎌倉」号に変わりました。

埼玉県南部や東京都北多摩地区から、乗り換えなしで鎌倉駅まで向かうのに便利なのはもちろん、横浜駅までお出かけするにも使える列車です。

運賃の他にB特急料金がかかり、料金が高額です。ネット限定割引「在来線チケットレス特急券(トク割)」を、所定料金から35%引きで買うのが現実的です。乗り換えがなくて快適という点に価値を見いだせれば、利用に値すると思います。

この記事では、臨時特急「鎌倉」号の概要をお話ししてから、所要時間のタイパや運賃・料金のコスパを深掘りします。そして、吉川美南駅から終点の鎌倉駅までの全区間を実際に乗車した体験を、皆さまと共有したいと思います。

この記事を読むと分かること
  • 東京都北多摩地区から利用するには時短効果があり、最適なこと
  • 特急料金は実乗距離で算出するため、最短ルートで計算する運賃よりも高めなこと
  • 特急券をえきねっとで購入すると割引があるため、オンライン購入がおススメ

特急「鎌倉」号の概要~実質定期列車の臨時列車~

鎌倉駅駅舎

武蔵野線内の主な駅と鎌倉駅/北鎌倉駅を結ぶ特急列車「鎌倉」号は、土休日に運行される多客臨時列車です。ほぼ毎週末走るので実質的に定期列車ですが、あくまでも臨時列車の扱いです。

2022年上期まで、快速列車「ホリデー快速鎌倉」として走っていました。気軽に乗車できる列車として人気がありましたが、2022年下期以降、特急列車に格上げされて特急「鎌倉」号に変わりました

特急列車に格上げになった当初は、E257系電車5両編成(普通車のみ)での運行でした。2024年3月以降E653系電車で運行されており、普通車の他にグリーン車も連結されています。

この列車に充当される編成は今後、E257系電車かE653系電車のいずれかであると推測します。編成によってグリーン車の有無が変わることに留意したいです。

どこを走るか~経由線区・営業キロ~

特急「鎌倉」号は、始発の吉川美南駅(埼玉県吉川市)から武蔵野線内を西に進みます。府中本町駅(東京都府中市)からは普段貨物列車しか走らない区間を通り、鶴見駅(横浜市鶴見区)に至ります。鶴見駅では列車番号が変わり、東海道本線と横須賀線(湘南新宿ライン)に合流して、終点の鎌倉駅(神奈川県鎌倉市)に到着です。

発駅着駅線区営業キロ
吉川美南府中本町武蔵野線49.8
府中本町鶴見武蔵野線28.8
鶴見大船東海道本線24.8
大船鎌倉横須賀線4.5
  合計107.9

特急「鎌倉」号が走る路線の詳細です。吉川美南駅から鎌倉駅までの全区間107.9kmを、約1時間50分かけて走ります。

特急鎌倉号系統図

上図に、列車が走る路線の大まかな位置関係をまとめてみました。

特急「鎌倉」号が走るのは、武蔵野線の吉川美南駅から西の区間です。吉川美南駅を出発してから南越谷駅/武蔵浦和駅/北朝霞駅/新秋津駅/西国分寺駅で乗客を乗せてから横浜駅までひた走り、北鎌倉駅/鎌倉駅に着きます。

大宮駅から東京都心を縦貫し、鎌倉駅まで直線状に進む湘南新宿ラインに対して、武蔵野線を通る特急「鎌倉」号は、かなり大回りのルートを走ることが分かります。

いつ走るか~ダイヤ・所要時分~

臨時特急「鎌倉」号は、ほぼ毎週末走るので、実質的には定期列車です。とはいえ、あくまでも臨時列車の扱いということは押さえておきたいです。

この列車の正式な運行日は、年4回発表される「臨時列車のお知らせ」に掲載されます。いち早く知ることができるのは当該お知らせですが、JR東日本のデジタル時刻表を確認すると見やすくて良いと思います。

朝に鎌倉駅に向かい、夕方に鎌倉駅から戻るというダイヤです。武蔵野線沿線から横浜や鎌倉にお出かけする観光客がターゲットの列車です。

【下り】吉川美南駅 7:48分発 → 鎌倉駅 9:36分着

【上り】鎌倉駅 16:24分発 → 吉川美南駅 18:10分着

所要時分横浜鎌倉
吉川美南82108
南越谷75101
武蔵浦和6288
北朝霞5581
新秋津4470
西国分寺3662

武蔵野線内の停車駅から、横浜駅/鎌倉駅までの所要時間を分で記載した一覧表です。東京都北多摩地区に位置する新秋津駅と西国分寺駅から横浜駅までの所要時間の短さが際立っています。埼玉県越谷市、さいたま市付近からは所要時間が長く、東京都心を経由しても所要時間があまり変わりません。しかし、北多摩地区からは直通列車ならではの時短効果があり、利用価値が高い列車です。

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特急「鎌倉」号の運賃・料金~特急列車化で実質値上げ~

E257系電車エクステリア

特急「鎌倉」号は、2022年上期まで快速列車「ホリデー快速鎌倉」として運行されていました。快速列車時代は、指定席券530円(大人)と乗車券があれば乗車できるリーズナブルな列車として、とても人気がありました。

ところが、2022年下期から特急列車に格上げされました。停車駅や所要時間といった運行面は改善されたものの、必要なきっぷが指定席券からB特急券に変わりました。料金面でリーズナブルさが失われ、それなりの対価が必要になりました。

特急料金

それでは、乗車に必要なきっぷの料金についてみていきましょう。当記事では、グリーン車の料金についての説明を割愛します。ご了承ください。

先ほど、吉川美南駅から鎌倉駅までの営業キロが107.9kmとお話ししました。これは、武蔵野線をぐるっと回って走る実際の距離です。特急料金については一部の例外を除き、実際の走行距離で算出します。

営業キロ横浜鎌倉
吉川美南85.7107.9
南越谷79.4101.6
武蔵浦和65.787.9
北朝霞58.780.9
新秋津48.971.1
西国分寺39.862.0

大半の駅からは、横浜駅/北鎌倉駅/鎌倉駅までの距離は51kmから100kmの間に入ることが分かります。この距離から導かれる料金額は、停車駅ごとに次の通りです。

料金種別B特急券B特急券料金トク35
着駅横浜鎌倉横浜・鎌倉
吉川美南1,4801,8901,220
南越谷1,4801,8901,220
武蔵浦和1,4801,480960
北朝霞1,4801,480960
新秋津1,0501,480960
西国分寺1,0501,480960
2024年3月現行のねだん

北鎌倉駅への料金は省略していますが、ほぼほぼ鎌倉駅と一緒と考えてオッケーです。割引前の所定料金は、B特急料金です。従来の指定席券530円と比較するとかなり割高で、心理的ハードルが上がりました。

そんな事情があってか、北鎌倉駅/鎌倉駅までの特急料金には、ネット専用の割引料金「在来線チケットレス特急券(トク割)」の設定がありますB特急料金の35%引きです。横浜駅には設定がないのですが、所定のB特急料金よりも安いです。北鎌倉駅まで購入して、横浜駅で下車してもオッケーです。

これでも、かつての指定席券よりもかなり高いです。。

NOTE

チケットレス特急券であっても、ネット限定割引料金「在来線チケットレス特急券(トク割)」のルールは特殊です。乗車変更・払いもどしをする場合のルールは、普通のきっぷとは異なることを覚えておきましょう。他の列車の特急券への変更は、発車時刻まで可能です。オンライン上での払いもどしには、1枚320円の手数料がかかります(条件によって例外があります)。

運賃(乗車券)

列車に乗車するには、特急券の他に、乗車券も必要です。

特急料金は実際に走る距離で算出しますが、運賃は実際に出発する駅から目的地の駅までの最短距離で算出します(東京近郊区間内)。そのため、特急料金の計算キロと運賃の計算キロが異なります。大抵の駅では、運賃計算キロが特急料金計算キロよりも短くなります。

運賃横浜鎌倉
吉川美南1,1101,460
南越谷1,1101,460
武蔵浦和9501,280
北朝霞9501,460
新秋津8301,280
西国分寺6601,110
2024年3月現行のねだん:鉄道駅バリアフリー料金込み

上表は、この列車の停車駅から乗車する場合の普通運賃です。鎌倉駅までの運賃も高額で、特急料金と合わせるとなかなかの金額になります(西国分寺駅ー横浜駅間でも1,620円)。特急料金と違い、運賃には割引の設定はありません

「大人の休日俱楽部割引」について

特急「鎌倉」号の走行キロが往復で201km以上になるので、「大人の休日俱楽部」割引が適用になるのではと一瞬思いました。

しかし、今申し上げた運賃計算上の営業キロは東京近郊区間内のため、実乗距離とは一致しません。この列車の場合、運賃計算上の営業キロが片道100kmに満たないため、結論的には割引になりません

他の列車から特急「鎌倉」号に乗り継ぐのはあまり考えられないので、乗車券の距離が片道100kmを超えるのはまれだと思います。とても微妙なところですが、残念。。

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特急「鎌倉」号|必要なきっぷの買い方

特急鎌倉号吉川美南駅にて

いま、乗車に必要な運賃・料金について深掘りしました。それでは、このきっぷをどのようにして買えばよいのでしょうか。

特急券

料金的に現実的な特急券は、当日の発車時刻まで買えるネット割引「在来線チケットレス特急券(トク割)」です。所定料金のB特急料金の35%引きです。

PCやスマホのウェブブラウザから「えきねっと」にログインし、購入操作することもできますし、「えきねっと」アプリ上で購入することもできます。いずれの場合も、あらかじめ登録したクレジットカードでのオンライン決済が必須です。

引用元:えきねっとアプリ

えきねっと上で特急「鎌倉」号のチケットレス特急券を購入する手順と画面遷移を、本記事文末に掲載しました。必要に応じてご覧ください。

クレジットカードを使用しない場合、所定料金の紙のきっぷ(B特急券)を駅で購入します。

乗車券

鎌倉駅までの運賃が結構高額であることを申し上げました。紙のきっぷを買っても、交通系ICカードで乗車しても、運賃部分の割引はありません。

そこで利用できるのが、フリーきっぷです。

休日おでかけパス本券

土曜・休日に利用できるのが「休日おでかけパス」2,720円です。このきっぷは紙のきっぷですが、Suica格納版の「のんびりホリデーSuicaパス」は、若干安い2,670円です。特急「鎌倉」号が停車する駅から鎌倉駅までJR線を往復すれば、十分に元が取れます。

なお、特急列車格上げ前に利用できた「青春18きっぷ」は、この列車に乗車するための乗車券として利用できなくなったことに留意したいです。

ここからは、2023年4月に乗車した際のルポです!

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特急「鎌倉」号でいざ鎌倉駅へ!

2023年4月中旬の日曜日に、鎌倉駅ゆき特急「鎌倉」号に全区間乗車しました。その時の様子を共有したいと思います。

(列車番号:8066M)
吉川美南駅 7:48分発 ー(武蔵野線)→ 鶴見駅 9:00分 ※運転停車

(列車番号:8067M)
鶴見駅 9:02分 ー(横須賀線/湘南新宿ライン)→ 鎌倉駅 9:36分着

走行線区が変わる鶴見駅では乗務員交代のため、2分間運転停車します。乗客の乗り降りはできません。

吉川美南駅発車標

特急「鎌倉」号が発着する吉川美南駅。列車が停車できる中線があるので、様々な臨時列車の発着駅になる駅です。列車は2番線からの発車です。

特急鎌倉号吉川美南駅にて

発車10分前には、すでに列車が入線していました。止まっていた車両はE257系電車5両編成です。臨時列車の運行に駆り出されるE257系5500番台の車両は、青色ではなく緑色の車体です。外装の塗装は、とても状態が良いです。

E257系電車行先標

車両の行先表示板。残念なことにLEDのドット欠けが目立ち、お古な車両であると感じてしまいます。車体の塗装ではごまかしきれません。。

E257系電車普通車車内

車内は至って普通のリクライニングシートです。同じE257系でも、踊り子号やあかぎ号で使用されている車両よりも状態はいいです。

E257系電車普通車車内

シートバックにはテーブルが付いていますが、この日の編成(OM-51)にはPC用コンセントやフリーWIFIの設備はありませんでした。

E257系電車普通車車内

主に臨時列車用のE257系5500番台の座席上には、座席販売状況を示すランプが付いていません。改造されていない分シンプルで、見栄えはきれいです。

定刻の7時48分に吉川美南駅を発車。車内はとても空いていて、各車両2組くらいしか乗っていませんでした。

北朝霞駅までの駅ではあまり乗る乗客がいなくて、まだまだ空いている状況。新秋津駅、西国分寺になって多くの乗客が乗車してきましたが、満席にはほど遠い状況でした。

実際の乗降状況からも、特急「鎌倉」号の価値が東京都北多摩地区への輸送にあることがわかりました。

府中本町駅からは「武蔵野南線」と呼ばれる区間へ。この区間のほとんどが、トンネルの中です。普段旅客列車が走らない区間であるため、スマートフォン通信の電波が通っておらず、ネット接続が不可能です。

鶴見駅構内

長いトンネルを出て、9時00分に鶴見駅の貨物線に到着。ここで列車番号が変わります。ホームがないところで運転停車し、運転士だけ交代(車掌さんは、全区間通しでの乗務でした)。

鶴見駅から東海道線の線路に移り、横浜駅に到着。あまり降りる人はいませんでした。

横浜駅を出てから横須賀線の線路に移り、一路終点の鎌倉駅へ。北鎌倉駅で半分程度の乗客が降りて、残りの半分が終点まで乗車していました。

まとめ

鎌倉駅駅名標

駅に掲示されていたように、特急「鎌倉」号の価値は、地元の駅から横浜駅/鎌倉駅まで乗り換えなしに快適に座れることにあります。

快速列車から特急列車に格上げされたことで、料金が実質的に値上げになりました。値上げで運賃・料金の総額が高額になるのが、利用上のハードルになってしまいました。

高額な特急料金を軽減するため、ネット限定料金の「在来線チケットレス特急券(トク割)」が35%引きで発売されています。クレジットカードでのオンライン決済が必須ですが、ネットで割引特急券を買うのが現実的です。

運賃については、割引がありません。そのため、JRで鎌倉駅まで往復する場合、フリーきっぷ「休日おでかけパス」の利用を考えたいです。

料金面のハードルがあるためか、ピークシーズン以外は満席になることはないように思います。そのため皮肉なことに、文字通りの快適さが確保されています。

車両の古さが気になります。シートのリクライニングが元に戻らなかったり、行先表示板のLEDドットが欠けているなど、メンテナンスの不良がうかがえます。

湘南新宿ラインの普通列車で東京都心を経由しても、鎌倉駅までほぼ同じ所要時間です。そんなわけで、武蔵野線を大回りする特急「鎌倉」号に利用価値を見出せるか否かは、人によりけりだと思います。

この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!

Appendix:「えきねっと」でのチケットレス特急券購入手順・画面遷移

ここでは、ウェブブラウザ上からえきねっとにアクセスし、特急券を購入します。

1.検索画面に列車の発駅と着駅、日にちと人数を入力します。「検索オプション」を開き「乗り換えなし(直通列車のみで検索)」にチェックを入れます。

引用元:えきねっとウェブサイト

2.検索結果に特急「鎌倉」号が表示されます。そのまま次へ進みます。

引用元:えきねっとウェブサイト

3.特急券の種類を選択します。「チケットレス35%OFF」を選択します(クレジットカードオンライン決済必須)。なお、「割引なし」を選択すると、B特急券が紙のきっぷで発行されます(駅でのお支払いも可能)。

引用元:えきねっとウェブサイト

4.座席指定を済ませた後、購入前の最終画面が表示されます。内容を確認してから先に進みます。

引用元:えきねっとウェブサイト

5.購入するチケットレス特急券は、ネット限定割引の「在来線チケットレス特急券(トク割)」です。注意事項を確認します。

引用元:えきねっとウェブサイト

6.クレジットカードでのオンライン決済が完了すると、特急券の購入が完了です。

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2024年6月05日:当サイト初稿(リニューアル)

2023年4月19日:前サイト初稿

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