東武鉄道の特急列車と言えば、日光・鬼怒川方面への列車をまず思い浮かべるのではないでしょうか。特急「りょうもう」号を最初に連想する人は、どちらかと言えば少数派であるように思われます。
この列車の目的地である両毛地域(群馬県東南部や栃木県足利市、佐野市周辺)には、華やかな観光スポットが集中しているわけではありません。そのため、特急「りょうもう」号にはなかなかスポットライトが当たらず、地味な存在に甘んじています。
しかし、この列車は自動車メーカースバルの主力事業所がある群馬県太田市に乗り入れており、ビジネス出張者や地元の用務客が多く利用する重要な列車です。いわば、縁の下の力持ち的な存在といえるのではないでしょうか。
比較的安価で快適に移動できる特急「りょうもう」号の需要は高く、間際で満席になることがしばしばあります。予定が決まったら、きっぷはお早めに。
この記事では、両毛地域への重要な足である東武特急「りょうもう」号について、網羅するエリア、列車の運賃・料金、きっぷの買い方といった情報を詳しくご説明します。
また、特急「りょうもう」号の珍しい連絡きっぷを、記事の後半で共有したいと思います。
- 「りょうもう」号と「リバティりょうもう」号の料金が異なること
- 特急券をネットで購入しても駅で購入しても同額であること
- 上毛電気鉄道の有人駅でも特急券と乗車券を購入できること
東武特急「りょうもう」号の概要~両毛地域へ直行~
最初に、東武伊勢崎線を走る特急「りょうもう」号の概要についてお話しします。
特急「りょうもう」号の停車駅
特急「りょうもう」号は、東京・浅草駅(東京都台東区)および北千住駅(東京都足立区)を出発し、久喜駅(埼玉県久喜市)を経由します。そして、館林駅(群馬県館林市)から始まる両毛地域一帯に至ります。
両毛地域内で停車する主な駅は、以下の通りです。
- 足利市駅(栃木県足利市)
- 太田駅(群馬県太田市)
- 新桐生駅(群馬県桐生市)
- 相老駅(群馬県桐生市)
- 赤城駅(群馬県みどり市)
朝晩の一部の便は、伊勢崎駅(群馬県伊勢崎市)や佐野駅・葛生駅(栃木県佐野市)にも向かいます。
他路線との接続
特急「りょうもう」号の終点である赤城駅および相老駅からは、上毛電気鉄道線やわたらせ渓谷鉄道線に乗り継げます。群馬県の県庁所在地である前橋市や栃木県日光市足尾地区を経由して日光市街にも向かえます。したがって、それらの方面へのサブルートであるとも言えます。
日光線の特急列車と違い、特急「りょうもう」号はJR線と直通運転を行っていません。そのため、東京都心に向かうには、北千住駅でJR常磐線や地下鉄各線に乗り換えるか、久喜駅でJR湘南新宿ライン・上野東京ラインに乗り換える必要があります。久喜駅は、東京と北関東地区を結ぶサブターミナルとして重要な結節点です。
東京都心に乗り入れず、他線との接続が悪いのが、東武伊勢崎線の決定的な弱点です。しかし、両毛地域と東京を結ぶ高速バス路線が存在しないため、この地域への交通手段としては東武特急「りょうもう」号が一択となります。
特急「りょうもう」号のバリエーション
特急りょうもう号には、従来から走る古い車両の「りょうもう」号の他、新車両リバティで走る「リバティりょうもう」号があります。途中の太田駅までは日中30分から1時間間隔、終点の赤城駅までは1時間間隔で、各列車が運行されています。
「りょうもう」号
200系電車6両編成で走る、従来からの列車です。車両のデビューから30年以上が経ち、経年劣化を感じます。しかし、乗車定員が多いため比較的満席になりにくく、比較的予約しやすいと思います。
座席もオーソドックスな作りで、運送に特化していることがよくわかります。
「リバティりょうもう」号
新造された500系電車は、3両編成もしくは6両編成です。伊勢崎線では、比較的最近から走るようになりました。3両編成で走ることがあり、週末は間際で満席になる傾向があります。その場合には乗車できないため、余裕をもって特急券を準備しましょう。
特急「りょうもう」号の料金・特急券の買い方
特急「りょうもう」号は、全車指定席の列車で、乗車する前に特急券を購入します。東武線の特急列車にはチケットレス割引がなく、紙の特急券と同額です。
東武鉄道の特急列車には、JR東日本のような立席特急券や座席未指定券の制度がありません。そのため、一度特急券が売り切れたら乗車できない点に留意しましょう(普通列車を利用するよう案内されます)。
特急券の購入について~満席にご注意~
特急「りょうもう」号は、関東地方が地盤の東武鉄道が運行する列車です。全国の駅で指定券を購入できるJR線の列車に対し、東武線の特急券は東武線沿線でしか購入できないのが課題でした。現在はネット予約が普及したため、その課題は解消したと言ってもよいでしょう。
特急「りょうもう」号は、観光性の列車ではないため、早い時期から満席になってしまうことはあまり考えられません。しかし、列車自体への需要が高いため、特に輸送力が少ない「リバティりょうもう」号においては、当日間際になると満席になることがしばしばあります。予定が決まったら、早めに特急券を買うのをおススメします。
特急料金
特急料金は、実際に乗車する営業キロをもとに各区間ごとに設定されています。
● りょうもう号
営業キロ | 料金 |
特定区間 | 550円 |
40kmまで | 600円 |
60kmまで | 850円 |
90kmまで | 1,050円 |
120kmまで | 1,250円 |
旧型車両のため、リバティりょうもう号よりいくらか安めの料金設定です。
● リバティりょうもう号
営業キロ | 料金 |
特定区間 | 550円 |
40kmまで | 700円 |
60kmまで | 950円 |
90kmまで | 1,250円 |
120kmまで | 1,450円 |
新型車両で、料金設定が高めです。スマホ用コンセントや無料WIFIを利用できます。
いずれも、乗車までに特急券を準備せずに乗車する場合、ドア口加算料金や車内券加算料金がかかります(1枚200円を加算)。
特急りょうもう号および特急リバティりょうもう号を利用した場合の運賃・料金の値段は、主な区間で以下の通りです。
● りょうもう号
乗車区間 | 運賃 | 特急料金 | 合計金額 |
北千住駅ー太田駅 | 1,000 | 1,050 | 2,050 |
北千住駅ー赤城駅 | 1,230 | 1,250 | 2,480 |
● リバティりょうもう号
乗車区間 | 運賃 | 特急料金 | 合計金額 |
北千住駅ー太田駅 | 1,000 | 1,250 | 2,250 |
北千住駅ー赤城駅 | 1,230 | 1,450 | 2,680 |
特急券の発売箇所
特急券は、乗車1か月前午前9時から以下の場所で購入できます。
● 東武線の駅
東上線内の各駅を含め、東武線の有人駅で購入できます。
特急券を購入する場合、一部の駅ではクレジットカードで決済できます(浅草駅、とうきょうスカイツリー駅、北千住駅、館林駅、足利市駅、太田駅)。同時に乗車券を買う場合に限り、乗車券分もクレカ決済が可能です。その他の駅では、現金決済に限られます。
● 旅行会社
近くに東武トップツアーズの営業所があれば、東武線内の駅で購入するのと同条件できっぷを購入できます。ただし、店舗が少なく、営業時間も短いという制約があります。
その他の大手旅行会社でも取り扱っている場合がありますが、取扱手数料が高額です。
● ネット予約サービス
東武鉄道「特急券インターネット購入・予約サービス」にて、事前に予約購入できます(ウェブサイトへのリンク)。東武鉄道の特急列車には、ネット限定の割引料金は特にありません。
ネットで特急券の予約を行う際、クレジットカードでオンライン決済しチケットレス乗車する方法と、仮予約をして駅の券売機や窓口で決済する方法があります。
チケットレスで乗車したい場合、クレジットカードで決済を完了させる必要があります。ただし、特急券の購入がネット上で完結するため、座席番号も確定します。スマートフォン上にチケットレス特急券を表示できるため、駅できっぷを受け取る必要がありません。
現金で決済したい場合、ネット上で仮予約をしてから駅に向かい、決済して紙のきっぷを受け取ります。座席番号は、紙のきっぷを受け取るまで分かりません。
特急券の様式
特急「りょうもう」号のきっぷは、基本的には端末券(紙のきっぷ)です。
チケットレスに対する優遇措置が現状では特にないため、いまだ紙の特急券が主流であるように見受けられます。
ネット予約サービスを利用してオンライン決済した場合、特急券や提示用画面は特にありません。決済に使用したクレカを携帯した上で、予約情報をスマートフォンで閲覧する形です。
しかし、特急券を接続社線の駅で購入する場合や、発車間際にドア口で料金を支払う場合などには、端末券以外のきっぷを見る機会がまれにあります。発券に時間がかかることに留意しましょう。
乗車券について
列車に乗車する際、特急券の他に乗車券も必要です。乗車券として利用できるのは、普通乗車券(紙のきっぷ)の他、以下の手段があります。
- 交通系ICカード
- 株主優待乗車証
- ふらっと両毛東武フリーパス
浅草駅から赤城駅まで乗車する場合、普通乗車券(紙のきっぷ)を購入すると、営業キロ115.0km分の運賃が片道1,230円です(バリアフリー料金込)。JRの幹線運賃と比較すると、びっくりするくらい低額です。交通系ICカードでも、運賃は同額です。
東武鉄道の株主優待乗車証は、金券ショップやネットオークションで流通していて、1枚800円から900円前後で入手できます。値段の安さの面からは、これが最強です。
「ふらっと両毛東武フリーパス」というフリーきっぷも、主な駅で発売されています。東武線茂林寺前駅以北のゾーンや両毛地域の路線バスに乗り放題で、おおむね乗車券往復分の値段です。往復とも特急「りょうもう」号を利用する際、乗車券として使用すれば十分に元が取れます。
【値段】浅草駅・北千住駅から:大人2,440円/子供1,250円
接続社線の駅で東武線連絡の手売りきっぷを買う
当記事の冒頭にて、相老駅ではわたらせ渓谷鉄道、赤城駅では上毛電気鉄道と接続していることをお話ししました。それらの駅には中間改札がなく、東武線のホームからそのまま乗り継げます。そのため、両社の連絡乗車券が発売されています。
わたらせ渓谷鉄道
わたらせ渓谷鉄道線と東武線に関しては連絡運輸の設定があり、両線通しの普通乗車券を購入できます。
わたらせ渓谷鉄道の有人駅である大間々駅と通洞駅では、東武線への連絡乗車券を購入できます。ただし、特急「りょうもう」号の特急券の中継発売が行われていなくて、不便です。
特急「りょうもう」号の特急券に関しては、わたらせ渓谷鉄道と東武線の接続駅である相老駅に着いた後、購入することになります。困ったことに、相老駅に着いた時点では満席になっていて、購入できないことがしばしばあります。
筆者もうまい具合で特急券を購入できず、特急「りょうもう」号への乗車を断念した経験があります。大間々駅と通洞駅の窓口で、特急「りょうもう」号の特急券が中継発売されることを、切に望みます。
この場合、あらかじめ予定を固めて、他の駅で特急券を買っておくしかありません(大間々駅に近いのは赤城駅、日光方面からは東武日光駅、東武ワールドスクウェアなど)。
わたらせ渓谷鉄道はかつて、硬券や補充券などの手売りきっぷの宝庫でした。しかし、2023年にきっぷの発売が完全に端末化され、それらのきっぷは消滅しました。
上毛電気鉄道
上毛電気鉄道と東武線の接続駅である赤城駅でも、特急「りょうもう」号の特急券を購入できます。上毛線のいいところは、赤城駅以外の有人駅でも特急券を中継発売してもらえることです。いまお話ししたように、間際になって満席になることがしばしばあるため、とてもありがたい配慮です。
- 中央前橋駅(群馬県前橋市)
- 大胡駅(群馬県前橋市)
- 西桐生駅(群馬県桐生市)
これらの有人駅で特急券を買う場合、中継発売となります。電話手配の上、席番を手売りのきっぷに転記してもらえます。
中央前橋駅にて購入したりょうもう号の特急券と普通乗車券。特急券は硬券で、乗車券は補充片道乗車券です(現在は硬券の代わりに出札補充券を使用)。
同じく中央前橋駅にて購入したリバティりょうもう号の特急券と普通乗車券。特急券は特別補充券にて発行され、乗車券は補充片道乗車券です。
特急券を購入してから電車に乗車できます。移動中に満席になる心配がなく、精神衛生上よいです。
上毛電気鉄道は、現在でも手売りきっぷが流通しています。今ご紹介した特急券と乗車券は実益を兼ねており、きっぷ鉄にとって魅力にあふれています。
まとめ
質実剛健なイメージがあり、縁の下の力持ち的存在の東武特急「りょうもう」号。運行本数も多く、ビジネス客や用務客の堅調な実需に応えています。そのため、早くから満席になることは少ないものの、間際で満席になることがしばしばあります。
全席指定の特急列車のため、あらかじめ特急券を買わないと乗車できません(JR東日本の「座席未指定券」のような制度はない)。東武線沿線に在住していないと特急券を購入しにくかったですが、現在ではネットでもチケットレス特急券を購入できるようになりました。
接続社線である「わたらせ渓谷鉄道」線では日光市(足尾)方面から、「上毛電気鉄道」線では前橋市方面から特急「りょうもう」号に乗り継ぐことができます。日常的に利用する経路とは言えませんが、サブルートとして利用するのは十分にアリです。
上毛電気鉄道線内の有人駅(赤城駅を除く)では、特急券を中継発売してもらい、手売りきっぷを入手する珍しい体験を味わえます。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考資料 References
● 東武時刻表 2024年3月16日号
● 購入・予約方法(東武鉄道ウェブサイト)2024.6閲覧
● ふらっと両毛東武フリーパス(東武鉄道ウェブサイト)2024.6閲覧
● 東武鉄道 特急券インターネット購入・予約サービス 2024.6閲覧
当記事の改訂履歴 Revision History
2024年6月23日:当サイト初稿(リニューアル)
2016年12月31日:前サイト初稿(原文作成)
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