2023年7月にデビューした、東武特急「スペーシアX(エックス)」。33年ぶりに新型特急として新造されたN100系電車で、東京・浅草駅(東京都台東区)から東武日光駅・鬼怒川温泉駅(栃木県日光市)までの区間を走るフラッグシップ特急列車です。
N100系「スペーシアX」には多彩な設備(座席の種類)があり、デビュー時には多くのメディアに取り上げられました。一般座席であるスタンダードシートの他、プレミアムシート、個室系の特別座席があり、乗ってみたい気持ちが高まります。
スペーシアXのデビュー早々、1号車コックピットラウンジに乗車する機会が得られました。併設されたカフェカウンターで購入できるクラフトビールやクラフトコーヒーをいただきながら、ゆったりソファに座って非日常の空間を満喫できました。
多彩な設備があるスペーシアXの中でも一番のウリなのが、カフェカウンターを優先的に楽しめる「コックピットラウンジ」です。前面展望を眺めながら座席でいただく、新鮮なビールののど越しが最高です!
この記事では、1号車「コックピットラウンジ」とカフェカウンター「GOEN Café SPACIA X」の実乗体験を共有します。記事中には、カフェカウンターで購入したドリンクや付け合わせの写真を多く盛り込みました。
また、スペーシアXの特別座席である「プレミアムシート」と「コンパートメント」の乗車体験を通して、それらがどのような設備であるかをあわせてお話しします。
- 1号車に加えて6号車の乗客にもカフェカウンターの優先利用権があること
- 一般車両乗客へのオンライン整理券の発行枚数には限りがあり、利用が困難なこと
- コンパートメント/コックピットスイートは完全な個室空間であること
「スペーシアX」特急券予約のツボ
東京と栃木県日光・鬼怒川を結ぶ東武鉄道のフラッグシップ特急列車「スペーシアX」に乗車するには、乗車券の他、乗車する設備に応じた特急券を用意する必要があります。
その特急券は、乗車1か月前の午前9時00分から東武線の駅や東武鉄道のネット予約サービスにて購入することができます。JRと発売開始時間が違うことと、ネット予約に事前受付の仕組みがないことに留意しましょう。
日帰りで往復ともスペーシアXに乗車する場合、往復ともコックピットラウンジやコンパートメントといった個室系設備を一人で同時に取るのは困難です。ゆきかかえりかのいずれか一方に山を張るとよいと思います。
スペーシアXに乗るまでの準備として必要な、料金やきっぷの買い方といった技術的な情報については、別の記事(↓)をご一読ください。スタンダードシート以外の設備では予約を取るのがなかなか難しいので、当該記事が役に立てば幸いです。
コックピットラウンジに実乗!~座席のレイアウト~
スペーシアXのデビューから3日目の2023年7月17日、お目当てのスペーシアX 1号に乗車するため、朝イチで東武浅草駅に入りました。
スペーシアX 1号:
浅草駅 7:50分発 → 東武日光駅 9:39分着(2023年ダイヤ)
この日、東武日光駅への往復には、スペーシアXを利用しました。ゆきは1号車コックピットラウンジ、かえりは2号車プレミアムシートでした。いわば9時打ちで手にしたきっぷです。1区画単位で発売される設備なので、きっぷは1組で1枚です。
東武浅草駅、日曜祝日の朝イチは、普段ならば人が少ないです。しかし、この日はスペーシアX祭りの余韻がずっと残っている感じで、人出が随分と多かったです。
浅草駅の改札口やホームには装飾が加えられ、ビジュアルが向上しました。
スペーシアXが発着する5番線ホームに筆者が入ってからほどなく、7時33分に列車が入線。
1号車のドアが開き、さて乗車と思ったら、カフェカウンターのスタッフや東武鉄道の本社スタッフが大勢やってきてびっくり。かなりざわついた状況で車内へ。
1号車コックピットラウンジのデッキ。この日はデッキに東武鉄道本社スタッフが添乗していて、1号車乗客以外の通り抜けを規制していました。
スペーシアXの銘板。ステンレスの質感が妙に似合っています。2023年日立製作所製と記されています。
カフェカウンターからコックピットラウンジ全体を眺めた様子です。4人掛けのソファーと2人掛けのチェアが整然と配置されています。サイズが大きいソファーやチェアで、見た目以上にゆったりしています。また、素材も高級感があります。
ただし、高級ホテルのラウンジをイメージする限り、ラウンジの造りとしてはやや密に思えます。体が不自由な人にとっては、空間や通路が狭く感じることでしょう。
窓の形や窓枠のデザインは、定期列車とは思えないほど独創的です。窓ガラスの形が六角形で、窓枠の形が「X」に見える形です。ソファーには、2席に1つの割合でクッションが置かれています。とても品がよいです。
運転席直後にある1人用座席。運転機器に遮られるため、座ったままでは前面展望が得られにくいですが、それでも絶好のかぶりつきシートには違いありません。
2人用のチェアとテーブル。座席もテーブルも固定されていて、自分では動かせません。座席のかけ心地は見た目によらずゆったりしていて、2時間程度の乗車時間であれば全然快適です。このスペースに座席が設置されず、通路であったならば、1号車全体がかなりゆったりした空間になっていたと思います。
4人用のソファーとテーブル。これも見た目以上にゆったりしています。電源コンセントは、1か所にまとめて2口分設置されています。
コックピットラウンジから見える運転席。スリムな空間に仕上がっていて、まさに操縦席(コックピット)といった趣です。
カフェカウンターを利用し朝からほろ酔い気分に
スペーシアXの目玉の一つが、アルコールやお茶を提供するカフェカウンターの存在です。このカフェカウンターは「GOEN Cafe SPACIA X」と呼ばれています。クラフトビールやクラフトコーヒー、おつまみといった、日光地区の産品を味わえます。
1号車・6号車乗客への優先販売
カフェカウンターは1号車の入口にあり、コックピットラウンジの乗客はカウンターの前を通り抜けます。そんなこともあり、コックピットラウンジに乗車中、優先的にカフェを利用できます。
カフェカウンターの様子。黄色いカウンターには、日光の猿がデザインされています。営業間もないこともあって、物があまり置かれておらずすっきりしています。
コックピットラウンジの座席からカフェカウンターを眺めたところ。入口で入場規制がされていたため、お祭り状態とは思えないくらい静かでした。
カウンターにあるビアサーバー。4銘柄のビールを収納できる造りです。ビールの注文があると、ここから注がれて客に提供される形です。列車の中にビアサーバーが設置されているのは、かなり珍しいと思います。
カフェカウンターは、1号車コックピットラウンジおよび6号車コンパートメント・コックピットスイートの乗客であれば、優先的に利用できます。商品を購入してから自分の席に持ち帰り、いただくという形です。
季節限定のクラフトビール「いちごエール」。イチゴの香りがカップから広がってきて、かなりいい匂いがしました。
酒のつまみとして買ったのが「酒粕と米粉のクラッカービスケット」。シンプルな味付けで、満腹にならずにほど良い加減でお酒が進みました。
クラフトコーヒーにはアイスとホットがありますが、筆者はホットコーヒーを。カップに装飾がないのが残念ですが、クオリティ自体は実際の喫茶店並みです。
一般座席利用時のカフェ利用システム
2号車から5号車の乗客には優先販売がないため、スマホから数量限定のオンライン整理券を取得します。カフェの利用チャンスは限りなく少ないと思った方がよいでしょう。
座席ポケットに、オンライン整理券を取得するためのQRコードがあるので、スマホで読み込みます。
列車編成ごとに整理券を取れる仕組みです。この画面が出たら先に進みます。
次の画面でカフェの利用時間帯が表示されますが、その前にGoogleアカウントの紐づけか新規会員登録が必要です。すでに利用登録が済んでいるスペーシアXのリピーターにとっては、とても有利です。
希望時間帯の選択が完了したら、このような整理券が表示されます。
下り列車では、春日部駅発車後にオンライン整理券の配布が始まります。上り列車では、下今市駅発車後に配布を開始します。下今市駅近辺はスマートフォンの通信状況が良好ではないため、整理券を取るためには辛抱強さが求められます。
かえりはプレミアムシートを利用~スペーシアXのエクステリア~
東武日光駅から浅草駅までのかえりにも、スペーシアXに乗車しました。ゆきの列車とは違う設備として、プレミアムシートを利用しました。
スペーシアX 6号:
東武日光駅 15:43分発 → 浅草駅 17:35分着(乗車当時のダイヤ)
プレミアムシートの特急券は、1席1枚です。
15時ちょうどに東武日光駅まで戻りましたが、すでにスペーシアXのN100系車両が入線していました。多くの人々が当該車両を撮影していて、これまたお祭り状態でした。ここで、スペーシアXのエクステリアをご紹介できればと思います。
車両の先頭部。他の車両を研究した上で開発されたということで、JR東日本のE261系「サフィール踊り子」や近鉄のフラッグシップ特急「ひのとり」「しまかぜ」と面影が似ています。
1号車の外装。六角形の窓枠が「X」と、とても独創的です。きっぷで乗れる定期列車としては最先鋭のデザインではないでしょうか。
スペーシアXのロゴ。意外に繊細で、品があります。
スペーシアXの行先表示器。最先端のLCD画面です。画面が遷移するので、動画にて共有します。
プレミアムシートの座席です。JRのグリーン車並みのスペックです。2人掛けシートと1人掛けシートがあります。1席に1つコンセントがあります。レッグレストや足置きは設置されていなくて、シンプルです座席の色はオレンジ色で、カジュアルに見えます。
各座席はバックシェルに包まれています。後ろを気にすることなく座席を目一杯リクライニングできますが、背中が後ろに倒れるのではなくて、体が前にのけぞるような形です。
座席のリクライニングは電動操作です。
コンパートメントの様子~個性的なインテリア~
別の日にも、スペーシアX 6号を利用しました。この時は6号車コンパートメントの予約が取れ、2人で乗車しました。
コンパートメントは、1人から4人で利用できます。きっぷを購入する時、乗車する人数を決めて、人数分の特急料金と個室料金をあわせて支払います。乗車人員が決まっていない場合には、とりあえず1人分だけ特急料金を支払っておき、当日車内で追加人員分を支払う手もあります(車内料金がかかります)。
6号車の廊下です。一番奥の1番は、コックピットスイートです。手前の2番から5番までが、コンパートメントです。壁面の色が鮮やかな橙色で、特徴的です。
各個室には、4人分のソファーとテーブルが配置されています。このソファーは、1号車コックピットラウンジに設置されたソファーと同じものです。座り心地はソフトで、快適です。電源コンセントは1室あたり2口で、必要最小限です。
廊下に面した扉です。コンパートメントの扉が閉まり、音が遮断されます。完全な個室のため、周囲を気にせず談笑できます。
コンパートメントに関しては特筆すべき点はありませんが、品質は高いです。ファミリーやグループにとっては、特に適した設備です。
まとめ
2023年7月に運行が開始された、東武鉄道のフラッグシップ特急「スペーシアX」。
スペーシアXの大きな特長は、多くの座席の設備です。一般座席のスタンダードシートにとどまらず、プレミアムシートやボックスシートなど個性のある設備が誕生しました。
それらの設備の中でも一番の目玉が、1号車のコックピットラウンジとカフェカウンターだと思います。走るホテルラウンジのようなゆったり空間でいただくクラフトビールやクラフトコーヒーは格別です。1号車コックピットラウンジの人気が高まっているように思えます。
列車の中のカフェラウンジということで、供給にはどうしても限りがあります。現在の体制では、利用できるチャンスが少ないです。いかに多くの乗客に体験してもらえるか、工夫の余地があるでしょう。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考資料 References
● 新型特急スペーシアX特設サイト(東武鉄道)公式サイト 2024.5閲覧
● インターネット購入・予約サービス 2024.5閲覧
当記事の改訂履歴 Revision History
2024年5月13日:当サイト初稿(リニューアル)
2023年7月24日:前サイト初稿
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