JR東日本・北海道管内の新幹線を安価に利用できる、ネット限定割引の「新幹線eチケット（トクだ値）」。賢く活用して、旅費を節約したいところですね。
「新幹線eチケット（トクだ値）」には、予約・購入する時期によって、割引率が高い「新幹線eチケット（トクだ値１４）」と通常の割引率の「新幹線eチケット（トクだ値１）」の2種類があります。
ここで留意すべきなのは、料金の設定区間がいずれも一部区間に限られていることです。つまり、すべての乗車区間に対して設定があるわけではないことを念頭に置く必要があります。そこで、実際に乗車したい区間の料金設定がない場合には、どうすればいいのか、疑問に感じるのではないでしょうか。
実際に下車する駅よりも少し先の設定駅に「新幹線eチケット（トクだ値）」の設定がある場合、実はあきらめなくても良いのです。
降りる駅よりも少し先の駅にトクだ値の設定がある場合、その駅まで買うと節約になることがあります！
この記事では、「新幹線eチケット（トクだ値）」（以下「トクだ値」と略します）を利用して、設定区間外を乗車する場合のきっぷの買い方をお伝えします。トクだ値を有効活用することで、より安価に移動ができるのです。
- トクだ値を含め新幹線eチケットには内方乗車が認められていること
- 区間によっては必ずしも安くならないためシミュレーションが必要なこと
- 発売席数が限定されているため、きっぷの予約購入に成功することが鍵であること
どの区間・列車にも「トクだ値」の設定があるとは限らない
冒頭で申し上げた通り、乗車する区間のすべてにトクだ値の設定があるとは限りません。利用を促進したい区間を中心にこの料金が設定されているため、実際に乗車する区間に設定がないことがあるわけです。
例えば、東北・北海道新幹線「はやぶさ」号に乗車する場合、東京駅（東京都千代田区）から仙台駅（仙台市青葉区）までの区間にはトクだ値の設定がありません。素直に考えれば、この区間を利用する場合には無割引の所定運賃・料金を出さないといけないと考えるのが自然でしょう。
また、乗車区間によっては、乗車できる列車の系統が限定されています。つまり、どの列車でも利用できるわけではありません。
前述の例でいうと、東京駅から仙台駅までの区間に関しては「はやぶさ」号ではなくて「やまびこ」号を利用することになります。
しかし、それらの列車では所要時間が余分にかかったり、列車の走行本数が少なかったりと、利用するのはあまり現実的ではありません。
トクだ値の設定がない区間、あるいは設定がある区間でも乗りたい列車ではない場合、本当に無割引の運賃・料金を支払わなければならないでしょうか。
ひとつ先の駅には「トクだ値」の設定があるのに
ここでは、50%割引の期間限定「お先にトクだ値スペシャル」（現在の名称は「新幹線eチケット（トクだ値スペシャル２１）」）を利用して、東京駅から新函館北斗駅方面に向かった筆者の実例を考えます。
実は、新函館北斗駅（北海道北斗市）の1つ手前の木古内駅（北海道木古内町）で降りる予定でした。しかし、東京駅ー木古内駅間には「お先にトクだ値スペシャル」の設定がありませんでした。
函館駅に向かうには、北海道新幹線終点の新函館北斗駅から在来線「はこだてライナー」を利用することが一般的であろうかと思います。しかし、新函館北斗駅の1つ手前にある木古内駅から、風光明媚な「道南いさりび鉄道」を利用して、函館駅にダイレクトに入る手もあるのです。
この場合、いま申し上げたように「お先にトクだ値スペシャル」を利用できません。木古内駅まで無割引の運賃・料金を本当に支払わなければならないのか、という疑問を抱いたわけです。
有効区間内の任意の途中駅で乗降が可能な「内方乗車」
きっぷを買って列車に乗車する際、そのきっぷに示された発駅・着駅で、必ずしも乗車・降車しなければならないわけではありません。一瞬信じられないことですが、規定がきちんとあります。
きっぷの有効区間内の駅であれば、本来の発駅よりも先の途中駅から旅行を開始し、また、本来の着駅よりも手前の途中駅で旅行を終了することができます。これを、専門用語で「内方乗車」といいます。
内方乗車には、方向別に2つのパターンがあります。
ゆきの旅行で少し先までのきっぷを買って、実際には途中の駅で下車する場合が、一つ目のパターンです（厳密には、前途の「権利放棄」）。
東北新幹線で東京駅から仙台駅まで乗車する場合、一つ先の古川駅（宮城県大崎市）まできっぷを買う例が、これにあたります。
ゆきとは逆方向のかえりの旅行で、料金設定がある本来の発駅からのきっぷを買って、実際には途中駅から乗車する場合が、二つ目のパターンです（狭義の「内方乗車」）。
東北新幹線で、反対方向の仙台駅から東京駅まで乗車する場合、古川駅からきっぷを買う例が、これにあたります。
これが、一般の人々には意外に知られていないのです。
この方法は、鉄道会社も正式に認めています。ネット限定割引料金の「トクだ値」でも内方乗車が認められているため、応用が可能です。この場合、実際に利用する区間にかかわらず、料金の設定区間で購入する形です。
先にお話しした東京駅ー木古内駅間の実例でいえば、東京駅ー新函館北斗駅間に設定されていた「トクだ値スペシャル（期間限定）」を利用することで、安く乗車することが可能だったわけです。
本来の設定よりも安く予約できないかをあきらめず探り、最終的に安くつく結果となりました。
内方乗車に関する考え方について、別の記事（↓）にまとめました。ご興味のある方は、是非ご一読ください。
「新幹線eチケット」は普通のきっぷ（普通乗車券）ではなく、企画乗車券です。普通のきっぷには認められている途中下車が認められていないため、途中駅で降りたらその先の区間には乗車できません。また、途中駅から乗車した場合、きっぷに表示されている発駅からやっぱり乗車したいとは主張できないことに留意しましょう。
無割引の運賃・料金と「新幹線eチケット（トクだ値）」の値段の比較
それでは、代表的な区間における普通車指定席の所定運賃・料金と「新幹線eチケット（トクだ値）」の金額を比較してみたいと思います。
東京駅ー仙台駅間を「はやぶさ」号・「やまびこ」号で移動する場合
東京駅から仙台駅まで乗車する場合におけるトクだ値の商品設計には、アヤがあります。
● 無割引の新幹線eチケット（通常期）
東京駅ー仙台駅間 11,210円
● 新幹線eチケット（トクだ値１４）（乗車14日前の予約で25-30%割引）
東京駅ー古川駅間 8,820円（はやぶさ号：トク25）
東京駅ー古川駅間 8,000円（盛岡発着のやまびこ号：トク30）
東京駅ー仙台駅間 7,610円（仙台発着のやまびこ号：トク30）
仙台駅までの「はやぶさ」号には、トクだ値の料金設定はありません。そのため、仙台駅から一駅先の古川駅に停車するはやぶさ号（列車号数が100番台の列車）を予約します（厳密には「途中下車の前途放棄」に該当）。
逆に、仙台駅から東京駅まで帰る時には、一つ先の古川駅から列車を予約します（狭義の「内方乗車」に該当）。
仙台駅発着の「やまびこ」号は、所要時間がかかります。仙台駅までノンストップの「はやぶさ」号を利用したい場合は（実際乗車せずとも）古川駅まで購入します。本来の値段より少しだけ高いですが、無割引の値段からはずいぶん安いことがお分かりいただけるでしょう。
東京駅ー越後湯沢駅間を「とき」号で移動する場合
東京駅から越後湯沢駅まで乗車する場合も、一筋縄にはいかないです。
● 無割引の新幹線eチケット（通常期）
東京駅ー越後湯沢駅 6,590円
● 新幹線eチケット（トクだ値１４）
東京駅ー浦佐駅 5,680円（とき号：トク25）
東京駅ー越後湯沢駅 4,600円（たにがわ号：トク25）
越後湯沢駅までの「とき」号には、トクだ値の価格設定はありません。一駅先の浦佐駅まで買うと、無割引の値段より安くなる場合があります（厳密には「途中下車の前途放棄」に該当）。
逆方向で、越後湯沢駅から東京駅まで「とき」号で帰る時には、一つ先の浦佐駅から列車を予約します（狭義の「内方乗車」に該当）。
本数が少ないのが難ですが、「たにがわ」号に関しては越後湯沢駅までトクだ値の設定があります。
東京駅ー木古内駅間を「はやぶさ」号で移動する場合
● 無割引の新幹線eチケット（通常期）
東京駅ー木古内駅 21,750円
● 新幹線eチケット（トクだ値１４）
東京駅ー木古内駅 16,300円
● お先にトクだ値スペシャル ※期間限定
東京駅ー新函館北斗駅 11,610円
木古内駅までのトクだ値料金設定はあるのですが、期間限定で発売された「お先にトクだ値スペシャル」には、木古内駅までの値段設定がありませんでした。そのため、木古内駅までの「お先にトクだ値」を購入するのではなく、一駅先の新函館北斗駅まで「お先にトクだ値スペシャル」を購入しました。
この経路を利用する場合、予約する「はやぶさ」号は、東京駅ー新函館北斗駅間を予約購入する場合でも、木古内駅に停車する列車を選ぶ必要があります。
これは、実際に使った「新幹線eチケット」の改札通過メールです。内方乗車する場合でも、自動改札を通過できます（きっぷを2枚以上併用する場合は、出場時に有人改札で要処理）。
きっぷが取りにくいのが課題
いいことづくしの「新幹線eチケット（トクだ値）」ですが、この料金の難点は発売席数が限定されていることです。
飛行機と異なり、実際に発売する席数は公開されていないのですが、その席数はかなり少ないと想定されます。本音では渋いと感じますが、割引料金なので致し方ないところです。
そのようなわけで、特に「新幹線eチケット（トクだ値１４）」に関しては、列車によって争奪戦になるのが現状です。
乗車1か月前の午前10時00分の発売開始までに旅程を確定し、きっぷの予約戦に臨みたいです（念のため申し上げておくと、この料金はネット限定であり、駅では購入できません）。
ご自身で料金の比較を～「えきねっと」の検索を活用～
この記事でご紹介した区間に限らず、多くの区間でこのワザを応用できると思います。実際に乗車する区間の値段を、ご自身でシミュレーションしてみてはいかがでしょうか。
シミュレーションに活用したいのは、実際に列車の予約を行える「えきねっと」です。乗車したい区間と日にちを入力して検索をかければ、料金の金額と予約可能な料金種別が即座に表示されます。
14日前までに購入する「新幹線eチケット（トクだ値１４）」であれば、シミュレーションなしでも大体安いだろうと想定できます。
しかし、前日まで購入できる「新幹線eチケット（トクだ値１）」に関しては割引額が少なく、所定料金よりも高額になることがあります。慎重に損得計算されることをおススメします。
まとめ
ネット限定の割引料金「新幹線eチケット（トクだ値）」は、すべての乗車区間で料金が設定されているのではなく、利用が多い区間を中心に一部区間で設定されています。
したがって、料金設定のない区間にいかにして安く乗るか模索することになります。そこで活かせる考え方が「内方乗車」というテクニックです。
内方乗車とは、本来の発駅および着駅よりも内側の途中駅からきっぷを使い始める手法です。新幹線eチケットに関しても、内方乗車が認められています。
節約効果が大きいのが、乗車14日前までに購入を完了する「新幹線eチケット（トクだ値１４）」を活用した場合です。乗車区間にトクだ値の設定がない場合、実際に乗車する区間の一つ先の駅までのトクだ値を購入します。
この手法を活用する上での難点が、トクだ値の発売席数が少ないことです。購入できることが前提の節約術であるため、できるだけ旅程を早く確定して1か月前の予約戦に臨みましょう。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました！
参考資料 References
● 「えきねっと」公式ウェブサイト えきねっとトクだ値（JR東日本）2024.6閲覧
● 「JRおでかけネット」公式ウェブサイト トクトクきっぷのきまり（JR西日本）2024.6閲覧
当記事の改訂履歴 Revision History
2024年6月24日：当サイト初稿（リニューアル）
2020年10月01日：前サイト初稿
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