JR東日本管内の新幹線に導入されている「タッチでGo!新幹線」乗車サービス。交通系ICカードにチャージした残高で普通車自由席にチケットレス乗車できます。
ネット環境やクレジットカードなしに、交通系ICカードやスマートフォン一つでサクッと手軽に乗車できて便利です。
ところで、このサービスの料金は、所定の運賃・料金をベースに新幹線停車駅相互間の各駅別に設定されています。非常にシンプルな料金体系ですが、乗車パターンによっては不利になるケースがあります。
東京都区内など特定都区市内制度が適用される場合、従来通り普通乗車券と新幹線自由席特急券を買って乗車したほうが安価なことが多いです。慎重に利用の判断をしましょう!
この記事では、在来線を乗り継ぐ場合に「タッチでGo!新幹線」を利用して区間ごとに別々の運賃・料金を払うのか、通しの区間で乗車券・特急券(紙のきっぷ)を買って乗車するのか、損得計算が絡む微妙な問題を掘り下げたいと思います。
- 「タッチでGo!新幹線」は乗車券と特急券がセットになったきっぷであること
- 在来線の区間を乗り継ぐため場合、その運賃を別途支払うこと
- 乗車経路によっては紙のきっぷ(普通乗車券+新幹線自由席特急券)を買う方が安いこと
「タッチでGo!新幹線」乗車サービスを簡単におさらい
冒頭で申し上げた通り、新幹線の普通車自由席に乗車する場合、「タッチでGo!新幹線」を利用すれば、紙のきっぷの購入や受け取りなしに自動改札を通過できます。
このサービスは、2018年4月から、東北・上越・北陸新幹線の首都圏内の一部区間から始まりました。2022年3月からは、JR東日本管内の全路線に利用区間が拡大し、一通り完成したサービスになっています。
「タッチでGo!新幹線」を利用する際、事前にネットで申し込んで決済するのではありません。その代わり、手持ちの交通系ICカードやスマートフォンにあらかじめ運賃チャージをしておき、乗車する時に残高が引き落とされる仕組みです。
「タッチでGo!新幹線」サービスの概要・利用エリアや利用方法については、別の記事(↓)で詳しく説明しました。是非ご一読ください。
それでは、本題の料金についてお話していきます!
「タッチでGo!新幹線」と紙のきっぷではどちらがおトク?
「タッチでGo!新幹線」は、普通乗車券と新幹線自由席特急料金がセットになった企画乗車券です。その料金は、新幹線停車駅相互間で区間ごとに決まっています。
そのため、「タッチでGo!新幹線」で利用する新幹線に接続する在来線の運賃は通算されず、別途支払うことに留意したいです。
また、この料金は新幹線停車駅間で設定されているため、東京山手線内、東京都区内、仙台市内といった特定都市区内制度が適用されません。
そのため、発駅から着駅まで通しで計算された普通乗車券と新幹線乗車区間の新幹線自由席特急券を購入したほうが、旅費が安く上がる場合がしばしばあります。
発駅から着駅まで通しで購入できる従来の紙のきっぷと違い、「タッチでGo!新幹線」は運賃・料金面でメリットがあるのでしょうか。
紙のきっぷより割高になることがある
「タッチでGo!新幹線」で乗車した場合、紙のきっぷより割高になり、不利益になることがあります。乗車する区間ごとに、事前の損得勘定が必須です。
JR東日本エリアの新幹線には、東海道・山陽・九州新幹線の「運賃ナビ」のような、運賃・料金の比較ツールがありません。えきねっとや「JR東日本アプリ」などのスマートフォンアプリを利用して、自分で試算する必要があるわけです。
紙のきっぷのみに適用される特定都区市内制度
紙のきっぷで乗車する場合、発駅から着駅まで通しの普通乗車券と乗車区間の新幹線自由席特急券をそれぞれ購入することになります。
次の例は、東京山手線内のいずれかの駅から大宮駅まで在来線で向かい、大宮駅で新幹線に乗り換えて高崎駅まで向かうきっぷです。紙のきっぷにおいては、特定都区市内制度が適用されています。
この乗車券は、在来線の駅から高崎駅まで通しで運賃計算されています。中心駅の東京駅から高崎駅まで105.0kmで、運賃額は1,980円です(新幹線経由の場合、きっぷの有効期間が2日間で、大宮駅などで途中下車が可能です)。
新幹線自由席特急券は、大宮駅から高崎駅まで1,870円です。普通乗車券との合計金額は、3,850円です。
特定都区市内制度に関する基本に関しては、別の記事(↓)が分かりやすいです。是非ご一読ください。
具体的な区間での運賃・料金の比較
それでは、「タッチでGo!新幹線」の料金と紙のきっぷの運賃・料金を比較していきましょう。
発駅と着駅の組み合わせは無限ですが、ここでは高崎駅(群馬県高崎市)と前橋駅(群馬県前橋市)を挙げてみることにします。損得計算の考え方と実際の流れをご理解いただきたいと思います。
新幹線停車駅が目的地の場合(高崎駅)
下表は、新幹線停車駅の高崎駅を目的地にした場合の、普通車自由席の運賃・料金早見表です。利用が多そうな駅を取り上げてみました。
【東京駅-高崎駅で新幹線利用】
乗車区間 | 紙のきっぷ(自由席) | タッチでGo!新幹線+SF乗車 | 備考 |
東京=高崎 | 4,490 | 4,490 | 乗車券の発駅は「東京山手線内」 |
品川ー東京=高崎 | 4,490 | 178+4490=4,668 | 乗車券の発駅は「東京山手線内」 |
横浜ー東京=高崎 | 4,820 | 483+4490=4,973 |
「タッチでGo!新幹線」の料金と在来線運賃の合算金額のほうが高くなります。特定都区市内制度の利点がよく現れています。
【大宮駅-高崎駅で新幹線利用】
乗車区間 | 紙のきっぷ(自由席) | タッチでGo!新幹線+SF乗車 | 備考 |
大宮=高崎 | 3,210 | 3,210 | |
池袋ー大宮=高崎 | 3,850 | 406+3210=3,616 | 乗車券の発駅は「東京山手線内」 |
渋谷ー大宮=高崎 | 3,850 | 571+3210=3,781 | 乗車券の発駅は「東京山手線内」 |
紙のきっぷに比べて、「タッチでGo!新幹線」の料金と在来線運賃の合算金額のほうが若干安くなります。新幹線の乗車距離が短いのが要因です。
新幹線から在来線に乗り換え目的地に向かう場合(前橋駅)
下表は、両毛線前橋駅を目的地にした場合の、普通車自由席の運賃・料金早見表です。高崎駅まで新幹線を利用し、高崎駅から前橋駅までは在来線に乗り換えて利用する想定です。
【東京駅-高崎駅で新幹線利用】
乗車区間 | 紙のきっぷ(自由席) | タッチでGo!新幹線+SF乗車 | 備考 |
東京=高崎ー前橋 | 4,490 | 4490+199=4,689 | 乗車券の発駅は「東京山手線内」 |
品川ー東京=高崎ー前橋 | 4,490 | 178+4490+199=4,867 | 乗車券の発駅は「東京山手線内」 |
横浜ー東京=高崎ー前橋 | 5,150 | 483+4490+199=5,172 |
「タッチでGo!新幹線」の料金と在来線運賃の合算金額のほうが高くなります。特定都区市内制度の利点が特によく現れています。
【大宮駅-高崎駅で新幹線利用】
乗車区間 | 紙のきっぷ(自由席) | タッチでGo!新幹線+SF乗車 | 備考 |
大宮=高崎ー前橋 | 3,390 | 3210+199=3,409 | |
池袋ー大宮=高崎ー前橋 | 3,850 | 406+3210+199=3,815 | 乗車券の発駅は「東京山手線内」 |
渋谷ー大宮=高崎ー前橋 | 3,850 | 571+3210+199=3,980 | 乗車券の発駅は「東京山手線内」 |
紙のきっぷの金額と、「タッチでGo!新幹線」の料金と在来線運賃の合算金額とは、駅によって微妙ですが、両者の差は小さいです。これも、新幹線の乗車距離が短いからだと考えます。
だから利用開始時に規約への同意を求められる
このように、「タッチでGo!新幹線」を利用する場合の料金と、紙のきっぷを利用する場合の運賃・料金では、大きなねじれが発生します。
「タッチでGo!新幹線」の料金の方が高くなることがしばしばあり、場合によってはトラブルに発展する可能性があります。そのため、サービスの利用開始時にスマートフォンアプリもしくは駅の券売機で利用開始をする際、規約への同意を求められるわけです。
まとめ~利用前には料金のシミュレーションを~
ネットいらず、クレジットカードいらずで、運賃チャージだけで自動改札をサクッと通れる「タッチでGo!新幹線」乗車サービス。しかし、料金の損得勘定までは手軽ではなく、乗車する区間によって利用するかしないかを慎重に判断したいです。
新幹線停車駅相互間であれば、事情がない限り「タッチでGo!新幹線」一択です。しかし、新幹線に乗車する前後に在来線の列車に乗車する場合、紙のきっぷを買って乗車したほうが安くなる傾向があります。
東京都区内、東京山手線内、仙台市内といった特定都区市内制度が適用される駅を利用する場合、運賃面では従来の紙のきっぷの優位性が目立ちます。当該制度をうまく活用し、旅費の節約を図りたいです。
このような現象が発生するため、駅の券売機では「タッチでGo!新幹線」乗車サービスの利用開始時に同意を求められるわけです。乗車券と特急券を併用して乗車するか、運賃・料金がセットの「タッチでGo!新幹線」を利用して乗車するか、今後永遠の課題になると思います。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考資料 References
● 「タッチでGo!新幹線」公式ウェブサイト(JR東日本)2024.6閲覧
当記事の改訂履歴 Revision History
2024年6月28日:当サイト初稿(リニューアル)
2023年01月19日:前サイト第2稿
2018年4月08日:前サイト初稿
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