JR東日本首都圏エリア発着の在来線特急列車は、2024年3月のダイヤ改正をもって全列車が全車指定席となりました。それらの特急列車に乗車するには、乗車する前に特急券を購入し、座席指定を受ける必要があります。
しかし、以下のような事情がある場合、座席指定を受けられないことがあります。
- 列車が満席の場合
- 乗車する列車を確定できないけど、特急券だけ用意する場合
- 特急券を持たずに列車に乗車した場合(無札)
これらの中でも、特急券を持たずに乗車してしまった場合、車内料金が大人で260円加算されてしまいます。できれば回避したいところです。
そこで登場するのが「座席未指定券」です。
この記事では、JR東日本・JR北海道管内の在来線特急列車における「座席未指定券」の買い方・変更・払いもどし方、座席指定の受け方、座席の座り方について解説します。そして、座席未指定券で乗車するシステムの課題についてお話ししたいと思います。
- 座席指定が受けられない場合に購入するきっぷ
- 座席指定を受けても受けなくても特急料金は同額
- 予約した席に他人が座っている可能性があること
「座席未指定券」の対象列車~どのような場合に買うか~
座席指定を受けた特急券を購入できない場合、やむを得ず購入する「座席未指定券」。たとえ座席指定を受けられない場合でも、車内料金の適用を回避するため、乗車する前に必ず座席未指定券を買っておきたいです。
前述の通り、次のケースでは「座席未指定券」を購入することになります。
- 列車が満席の場合
- 乗車する列車を確定できないけど、特急券だけ用意する場合
この場合でも、座席指定を受けることを強くおススメします。
「座席未指定券」のシステムがあるのは普通車指定席だけで、グリーン車には適用されません(元々全席指定なので)。
「座席未指定券」の対象となる首都圏エリアおよび北海道エリア発着の在来線特急列車は、全車指定席の次の列車です。
> 東海道線特急:
特急「踊り子」号・「湘南」号
> 中央線特急:
特急「あずさ」号・「かいじ」号・「富士回遊」号・「はちおうじ」号・「おうめ」号
> 高崎線特急:
特急「あかぎ」号
> 常磐線特急:
特急「ひたち」号・「ときわ」号
> 房総特急:
特急「しおさい」号・「わかしお」号・「さざなみ」号【2024年3月から】
>「成田エクスプレス」
> JR北海道管内特急:
特急「北斗」号・「すずらん」号・「おおぞら」号・「とかち」号
これらの列車のうち、特急「踊り子」号の伊豆箱根鉄道駿豆線内の区間、特急「富士回遊」号の富士急行線内の区間については、鉄道会社の都合で座席指定を行いません。当該線内のみ乗車する場合には座席指定を受けられず、必然的に座席未指定券で乗車することになります。
なお、特急「踊り子」号の伊豆急行線内の区間については、座席指定を受けられます。
料金・買い方・特急券の様式
ここでは、座席未指定券の料金、買い方、紙の特急券の様式についてお話しします。
特急料金の金額
座席未指定券が適用される(上述した)列車の特急料金には、繁忙期や閑散期といったシーズナリティがなく、通年同額です。
また、座席指定を受けても受けなくても、特急料金は同額です。この点が、自由席の設定がある特急列車との大きな違いです。
● 東海道線特急・中央線特急・常磐線特急・房総特急・特急「あかぎ」号
通年同額です(シーズナリティによる価格差はありません)。余談ながら、座席指定を受けたチケットレス特急券は、下表の事前料金より100円引きです。
営業キロ | 事前料金(通年) | 車内料金(通年) |
50キロまで | 760円 | 1,020円 |
100キロまで | 1,020円 | 1,280円 |
150キロまで | 1,580円 | 1,840円 |
200キロまで | 2,240円 | 2,500円 |
300キロまで | 2,550円 | 2,810円 |
400キロまで | 2,900円 | 3,160円 |
乗車するまでに座席未指定券を含む特急券を購入すれば、必ず「事前料金」が適用されます。
「車内料金」が適用されるのは、特急券を持たずに普通車指定席に乗車した場合(無札)、そして「大人の休日俱楽部パス」を持っていても、座席指定を受けなかった場合です。準備なく列車に飛び乗ると高額の車内料金を取られるので、うかつに飛び乗りできません。
それに加え、車内で特急料金を支払った場合、座席指定は受けられません。空席に座るか立席かになります。座れなかったからといって、料金の払いもどしを請求することはできません。
● 「成田エクスプレス」
成田空港駅・空港第2ビル駅を発着するかしないかで、料金体系が異なります。
【成田空港駅・空港第2ビル駅を含まない場合】
上記の首都圏エリア特急列車の料金と同額
【成田空港駅・空港第2ビル駅を発着する場合】
別の料金体系(A特急料金:下表)が適用されます。ただし、シーズナリティーは導入されず、通年同額です。座席未指定券の発売、チケットレス特急券の割引等のシステムは、上記の首都圏エリア特急列車と同様です。
営業キロ | 特急料金(通年) |
50キロまで | 1,290円 |
100キロまで | 1,730円 |
150キロまで | 2,390円 |
200キロまで | 2,730円 |
● JR北海道管内「北斗・すずらん」号および「おおぞら・とかち」号
JR北海道におけるA特急料金が適用されます。その料金は、通年同額です(シーズナリティによる価格差はありません)。JR東日本管内の特急列車と異なり、座席未指定券を買わないで乗車しても車内料金の適用(加算)はありません。
営業キロ | 特急料金(通年) |
25キロまで | 850円 |
50キロまで | 1,160円 |
100キロまで | 1,680円 |
150キロまで | 2,360円 |
200キロまで | 2,730円 |
300キロまで | 2,950円 |
400キロまで | 3,170円 |
座席未指定券の買い方
ネット予約の「えきねっと」では、座席指定を受けて決済するのが前提のため、座席指定されていない座席未指定券を購入できません。列車が満席でも、座席未指定券を購入できません。
座席未指定券は、駅にある指定席券売機か、みどりの窓口(有人窓口)のいずれかで購入します。指定席券売機の操作画面は、記事文末のAppendixに掲載しました。
やむなく「座席未指定券」を購入した場合でも、乗車するまでに極力座席指定を受けましょう。
座席未指定券・特急券(指定券)の様式
座席未指定券[特急券(座席未指定)]の様式はこの通りで、列車名、区間および乗車日のみが指定されています。
座席指定を受けると、座席番号が記載された通常の[特急券]に引き換えになります。
社線区間の買い方・きっぷの様式
● 特急「踊り子」号の伊豆急行線内のみ乗車の料金
伊豆急行線内(伊東駅と伊豆急下田駅の区間)のみ乗車する場合の特急料金は、大人600円均一です。また、座席指定を受けても受けなくても同額です。
● 特急「踊り子」号の伊豆箱根鉄道線内のみの料金
伊豆箱根鉄道駿豆線内(三島駅と修善寺駅の区間)のみ乗車する場合の特急料金は、大人200円均一です。座席指定は受けられず、「座席未指定券」を購入して空席に座ります(「大人の休日俱楽部パス」の有効区間外です)。
● 特急「富士回遊」号の富士急行線内のみ乗車の料金
富士急行線内(大月駅と河口湖駅の区間)のみを乗車する場合の特急料金は、区間により金額が異なります(下表参照)。座席指定は受けられず、「座席未指定券」を購入して空席に座ります。
区間 | 大人料金 | 小児料金 |
大月~下吉田・富士山・富士急ハイランド・河口湖の駅間 | 600 | 400 |
富士山・河口湖の駅間 | 0 | 0 |
上記以外の駅間 | 400 | 300 |
列車の乗り方・座席の座り方
ここでは、座席未指定券を購入し、座席指定を受けない状態で列車に乗車する場合を想定し、説明します。
座席未指定券が発売される特急列車の各座席には、当該座席の販売状況を示す3色のランプが付いています(ランプがついていない列車もあります)。
このランプの色は、座席の販売状況次第でリアルタイムに変わります。ランプの色には3つあり、それぞれの意味は次の通りです。
● 赤色:まだ売れていない席(しばらくの間空席)
● 黄色:売れた席(これから先の駅で、間もなく席が埋まる)
● 緑色:売れた席(誰かがすでに座っているはず)
乗車する前に座席指定を受けずに、座席未指定券や無札で乗車した場合、その時点で売れていない「赤色」のランプが付いた座席に座ります。
列車が走っている間も、座席の販売が続きます。その座席が販売されて、ランプが突然「緑色」に変わることがあります。その場合、当該座席に座り続けることはできません。
座席指定を受けた特急券を持ったユーザーの立場が強く、今まで座っていた座席を譲らなければなりません。混雑時や満席時は座れなくなります。座れなかったといって、座席未指定券は払いもどしできません。
この写真を撮った時点では、赤色のランプがついた席がほとんどです。ほとんど空席の状態です。
この写真を撮った時点では、赤色、黄色、緑色が混ざっています。まあまあ席が売れている状態で、これから混んでくるかもしれない状況です。
この写真を撮った時点では、緑色のランプがついた席ばかりです。満席の状態です。
座席のポケットには、座席の座り方についての説明書が置かれています。表面・裏面の内容は、以下の写真の通りです。
外国人が進んで読むような内容とはいえません。
変更・払いもどしについて
座席未指定券の乗車変更を行う場合や払いもどしする場合の取り扱いを説明します。
座席未指定券は、普通車指定席の特急券に当たるため、指定券に準じた取り扱いがされます。
乗車変更
座席未指定券を使って、指定された列車、指定日と指定区間の範囲内で列車の座席指定を行う場合、乗車変更には当たりません。
座席未指定券の乗車日付や区間を変更する場合、そして座席指定を受け終わったあとの特急券を変更する場合、乗車変更に当たります。1回のみ乗車変更できます。
払いもどし
ここでお話しする払いもどしは、あくまでも列車に乗車しなかった場合です。列車に乗車した場合は、座れなかったとしても払いもどしできません。
座席未指定券は、指定券のカテゴリーに含まれます。ただし、座席指定を受けていない限り、払いもどしするタイミングにかかわらず払戻手数料は1枚340円です。乗車前日・当日に払いもどしする場合でも、座席指定を受けていなければ、座席指定した場合に適用される30%の払戻手数料はかかりません。
言い換えれば、乗車2日前よりも直前になってから、座席指定を受けない状態で座席未指定券を払い戻した場合、手数料が1枚340円で済むということになります(いったん座席指定を受けると、30%取られるという意味です)。
ここから先は、筆者の個人的な意見です。
「座席未指定券」の課題点~ユーザー想いとはいえない~
この記事で見てきたように、座席指定が前提の列車では、座席未指定券を発売することはイレギュラーといえます。ユーザーにとっては、以下のデメリットが考えられます。
● 料金面
満席の場合に、指定席特急券と同額の「座席未指定券」を買うということは、座れても座れなくても値段が変わらないことを意味します。
自由席が設定されている特急列車や(全車指定席であっても)新幹線が満席の場合に購入する特急券は「立席特急券」です。指定席特急料金から530円引き=自由席特急料金のレベルです。
この記事でお話ししてきた全車指定席の首都圏エリア発着特急列車は、まずもって料金面で実質引き上げになったといえます。
● 座席を譲ること
座席未指定券では座席指定がされないため、着席が保証されません。同じ値段を払っても、座席指定を受けられた人に席を譲らなければいけないのは、普通の感覚ならば納得いかないことではないでしょうか。
一方で、事前に座席指定をしていても、いざ列車に乗ったら自分が予約していた席に他人が座っていることがありえます。声をかけて空けてもらわなくてはならないのは、決して気持ちいいことではありません。
両者にとって納得がいかない感があるため、席を譲ってくれないなどのトラブル発生が十分予期できます。
そもそも、全車指定席の特急列車は、満席になったら、それ以上ユーザーを乗せないものです。ところが、「座席未指定券」を買わせて乗せてしまうのです。座っている人にとっても、座れない人にとっても、不快感だけが残るでしょう。本来ならば、座席定員以上の席を売るべきではありません。
需要に応じて柔軟に臨時列車を設定し、座席にあぶれる人が出ないような配慮が求められます。
まとめ
JR東日本首都圏エリアを走る在来線特急列車は、全車指定席です。その中でも一部の列車を除き、独特の乗車方法が採用されています。
各座席上部に付いているランプ(インジケーター)には、座席の販売状況が三色で表示されます。全車指定席にもかかわらず「座席未指定券」を持っていれば、座席指定を受けていなくても当該列車に乗車できます。
座席未指定券はネット予約サービス「えきねっと」では購入できず、駅の指定席券売機や窓口で購入します。指定席特急券と座席未指定券は通年同額で、座席指定を受けて設けなくても差がない形です。先に座席未指定券を買っておいて、乗車前に座席指定を受けることが可能です。
座席未指定券を持っている場合、空席を利用することになるため、満席の場合には座ることができません。自分の席を予約していても、その席に他人が座っていることがあります。その場合席を空けてもらわなくてはなりませんが、声をかけるのもかけられるのも、あまり気持ちがいいものではありません。
全車指定席をうたっている以上、特急券を買ったユーザー全員が着席できなければおかしな話です。需要に応じた座席の供給がJR東日本には求められます。
座席未指定券を購入した場合でも、極力座席指定を受けることを強くおススメします。最後までお読みいただき、ありがとうございました!
Appendix-1:指定席券売機で座席未指定券を新規購入
ここでは、どの駅にもある「乗換案内から購入」から購入する方法を説明します。駅によっては、ワンタッチメニューから購入できる場合もあります。
(1) 最初の画面にある「乗換案内から購入」を押します。
(2) 発駅、着駅、日付、人数を入力して「検索」します。
(3) 購入する列車を「選択」します(この画面の場合、どちらを選んでも結果は同じ)。
(4) 特急券だけを購入するか、乗車券込みで購入するか「選択」します。
(5) 設備が表示されたら、「座席未指定」を押します。
(6) 座席未指定券についての説明が表示されます。
(7) 購入内容を「確認」します。
【出力されたきっぷ】
Appendix-2:指定席券売機で座席未指定券に座席指定
初期画面にある「指定席」メニューから操作を進めます。
(8) 「指定席の変更/座席未指定券への座席指定」を押します。
(9) 座席未指定券を人数分、券売機に挿入します。
(10) 座席指定したい列車・設備を選択します(普通車指定席のみ押せます)。
(11) 座席を選択します。
(12) 最終画面にて、内容を「確認」します。
【出力されたきっぷ】
参考資料 References
● 「きっぷあれこれ」特急券(JR東日本)2024.02閲覧
● 首都圏発着特急列車 ご利用方法(JR東日本)2024.02閲覧
● 富士回遊号について(富士山麓電氣鐡道)2024.02閲覧
● 大人の休日俱楽部パス(JR東日本)2024.02閲覧
改訂履歴 Revision History
2024年5月04日:初稿 修正
2024年3月17日:初稿 修正
2024年01月02日:当サイト初稿(リニューアル)
2022年6月30日:前サイト初稿(原文作成)
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